英国の政党「リフォームUK」のリチャード・タイス氏(11月17日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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(英エコノミスト誌 2025年12月13日号)

主流派政党の「この世の終わりが来る」的な警告では失敗する。

 西欧の3大国を率いる真っ当な人々にとっては、泣きっ面に蜂というところだろうか。

 いずれの国も生活水準は伸び悩み、国際的な影響力が低下している。

 英国とフランスでは、ライバルの右派ポピュリストが政権を奪取しようと手ぐすね引いて待ち構えている(ドイツのための選択肢=AfD=でさえ、来年の州議会選挙では2つの州で勝利する可能性がある)。

 つい先日には最も重要な同盟国である米国から欧州が「文明消滅」に向かう過程を加速させていると非難を浴びた。

 これら3カ国の指導者は、もし右派ポピュリスト政党が国政選挙で勝利したりすればこの世の終わりだという警鐘も鳴らしている。

 ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、自身の政権が中道主義の最後のチャンスだと形容している。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、自身の率いる連合が昨年の欧州議会選挙で敗れた後、内戦の危険に言及した。

 英国のキア・スターマー首相は今月、本誌エコノミストのインタビューに応じた際、リフォームUK(改革党)は「英国とはどんな国かという本質そのもの」への挑戦だと述べている。

 確かに、右派ポピュリストの信条には非難すべきものが多く含まれている。しかし、それらを取り上げて終末論的な用語で語っているようでは、失敗は目に見えている。

 自分たちのためにも、そしてそれぞれの国のためにも、主流派政党とその支持者はこれまでとは違うアプローチを早急に取らねばならない。

主流派の警鐘が的外れなワケ

 第1に、このような終末論的な警告は、自分たちの失敗から世間の目をそらす試みのように感じられる。

 英国では、保守党政権下での14年に及ぶ低迷の後を受けて登場したスターマー氏の労働党政権が福祉への支出を増やしており、経済の急成長が見込めないなかでも記録的な増税に踏み切るつもりでいる。

 フランスでは、ここ3年で5人目となる現首相が来年度予算を国民議会で成立させようと慎重に歩みを進めるなかで、マクロン氏の年金支給開始年齢引き上げ法案が破棄された。

 ドイツでは、メルツ氏による「改革の秋」への計画がほとんど何も生み出さずに終わった。

 もし欧州の運命が危ういのであれば、今の指導者たちはなぜもっと成果を上げていないのか。

 第2に、主流派政党の脅しは当てにならない。右派ポピュリスト政権のなかには危険なものもあるが、そうでないものもある。

 ジョルジャ・メローニ首相の政権は従来型の政治家と同じようにイタリアを統治している。英国のリフォームUKの地方議員たちも、これまでのところは至って普通だ。

 確かにオルバン・ビクトル氏の党はハンガリーの制度・機関を支配下に置いて利用しているが、同党は近いうちに与党の座を追われる可能性がある。

 そうだとすれば、民主主義が死んだとは言えないように感じられる。