
韓国の次期大統領選挙(2025年6月3日)まであと20日を切った。
最有力候補である進歩系の共に民主党・李在明(イ・ジェミョン)氏とはどんな人物なのか。
その劇的な人生をたどって、韓国でも特異な歴史を持つ、彼の育った街を歩き、20代のころから知る同期生に会ってみた。
2025年5月12日、大統領選挙の公式的な運動期間が始まった。
李在明氏の最初の遊説場所は、ソウル中心部の光化門(
李在明氏には熱狂的ともいえる支持者が多い。同時に嫌悪感、拒否感を示すアンチ派がこれほど多い政治家も珍しい。
2024年1月には視察中に暴漢に刃物で切り付けられて大けがを
好き嫌いで真っ二つの評価
支持者は「社会の底辺を知っており、際立った実行力がある」と言い、拒否感を持つ有権者は「あの人は噓つきだ。当選したら(大統領在任期間の)5年間、海外で過ごしたい」とさえ話す。
筆者はソウルで韓国の大統領選挙を直接「観察」するのはこれで7度目になるが、これほど評価が真っ二つに割れる有力候補者はいなかった。
直近の各種世論調査を見ると、李在明氏が圧倒的優勢だ。
韓国の政界は明日のことはまったく分からないが、尹錫悦(ユン・ソンリョル=1960年生)前大統領時代の与党「国民の力」が候補選びでドタバタ劇を繰り広げるなど「敵失」も重なり、李在明氏の優位は動かないとの見方が多い。
では、20日後には大統領になる可能性が高いあれほどキャラの立った人物はどういう時代、地域を生きてきたのか。
半端ではない成り上がり人生の凄み
「世の中を憎悪しながら育った」
保守政党・国民の力の大統領候補選びに出た一人は韓国紙とのインタビューで、李在明氏をこう評した。
選挙戦での相手陣営候補への発言ではあるが、保守層には李在明氏のこれまでの「生きてきた軌跡」を理解できず、恐れながら嫌悪している傾向がある。
保守系の国民の力の大統領候補たちの経歴と、李在明氏の経歴はかけ離れている。
国民の力で最後まで残った候補4人のうち、ソウル大卒が3人(1人は医学部)、高麗大卒1人だ。
最終盤で名乗りを上げた韓悳洙(ハン・ドクス=1949年生)前首相もソウル大卒。保守陣営の前の尹錫悦氏もソウル大卒だった。
最近の保守系の大統領を見ても、朴槿恵氏は大統領の娘でソウルの西江(ソガン)大卒、李明博氏は高麗大から現代財閥に入った。
一方の、李在明氏は、中央大学(韓国)卒だが、貧しくて中学も高校にも通えなかった。小学校卒後、町工場で働き始めた。
学歴がすべてではないが、保守層の支持者からみると、ソウルの名門大学から公務員や大企業を経て政界入りした場合は、その人物や考え方を理解できると思い込みやすい。
これに対して、李在明氏の歩んだ人生は想像の範囲外だ。
半端ではない「成り上がり人生」、壮絶な幼少期を送った。その「凄み」が過去の発言の随所に見られるため、これが恐れや反発の遠因になっている。
李在明氏のこれまでの歩みを考えるうえでカギとなるのは、貧困時代を過ごし、さらに弁護士から政治家への転身した場所だ。
その時代の韓国経済の状況を整理しながら、そこに行ってみた。