ホームプラスとクーパンの10年

「ホームプラスが売却されてからちょうど10年だ。この間、韓国では劇的な流通業界の変化が起こってしまった」

 韓国紙デスクはその理由をこう話す。ホームプラスの業績が低迷してしまったということだ。

 今や韓国の流通業界の圧倒的な勝ち組企業、クーパンの登場が大きな要因だった。

 2015年、MBKパートナーズがホームプラスを買収した頃、韓国では「マート」と呼ばれるディスカウントスーパーの全盛期だった。

 新世界グループの「イーマート」、ロッテグループの「ロッテマート」、そしてホームプラスが全国で激突した。

 この年、ホームプラスの売上高は8兆5682億ウォンだった。一方のクーパンは、1兆1133億ウォンだった。

 2015年、ホームプラスを買収した時、MBKは「毎年1兆ウォンを投資して事業を拡大する」との計画を明らかにしていた。

 一方のクーパンも巨額の赤字をいとわず、全国の配達網、大型倉庫の建設に邁進した。その後何が起きたか。

 韓国紙デスクの説明だ。

「クーパンは2015年から7年間で累積6兆ウォンもの営業赤字を出しても大型投資を続けた。一方のホームプラスは、投資どころか、買収金額の回収のために有力店の売却を進めた」

 ホームプラスの売上高は6兆~7兆ウォン台で低迷した。

 2021年1335億ウォン、2022年2601億ウォン、2023年1994億ウォン、2024年1571億ウォンと、4年連続して営業赤字に陥った。

 一方のクーパン。2021年に売上高が20兆ウォン、2023年に30兆ウォンを超え、2024年には41兆2901億ウォンに達した。営業利益も6023億ウォンと2年連続して6000億ウォンを超えた。

 韓国の流通市場に占めるオンライン販売の比率は、2016年に32%だったが、2024年に50%を超えた。

 急激に進んだ流通のデジタル化の大波に、ホームプラスはのみ込まれたのだ。

 この間、クーパンの売上高は、韓国の全百貨店の売上高合計よりも多くなった。

 MBKにとってホームプラスは今や頭痛の種だ。10年間の「流通激変」の直撃を受けて、上場や売却の見通しが立たないのだ。