格下げを知って社債を売ったのか?

 これだけなら経営や投資戦略の問題だ。

 それ以上に深刻な問題も出てきた。MBKとホームプラスに対しては回生手続きに至る過程が適切だったのかどうかという問題も出てきた。

 信用評価会社が格下げを発表したのは2月27日と28日。

 ホームプラスが、資産流動化短期社債を最後に販売したのが2月25日だった。

 信用評価会社は2月25日午後に「格下げの予備通告」をしていたという。

 格下げを知りながら社債を販売し、その直後に償還猶予を含む「回生手続き」を申請したとすれば、法的な問題にもなりかねない。

 MBKとホームプラスは「社債発行の後に予備通告があった」と説明し、問題はなかったという立場だ。

 だが、社債を販売した中堅証券会社はホームプラスを批判している。国会での追及も始まった。

 3月18日には、MBKの副会長兼ホームプラス共同代表が国会で厳しい追及を受けた。

私財を供出せよ

 韓国で、オーナーがいる企業の経営問題が起きた時に必ず出てくるのが「オーナーが私財を供出せよ」という圧迫だ。

 ホームプラスは、もともとはサムスングループ企業だったが、テスコとの合弁、テスコの完全子会社を経て投資ファンドの傘下にある。

 それでも出てきた。

 一部取引先や労組、ホームプラス内で飲食店などを運営する個人企業主の一部などから、「私財で支援すべきだ」との声が出た。

 いったい誰の私財か。

 ホームプラスには個人オーナーはいないから、ホームプラスを保有するMBKの創業者が出せ、ということだ。

 投資ファンドの創設者に私財を出せ、という話は聞いたことがない。

 そのそも、MBKはホームプラスの全株式を保有するが、MBKの資金の出し手は金融機関や年金基金など投資家だ。

 創業者の個人マネーではない。そんな理屈は通らない。

 韓国のメディアも、ここ数週間、MBKがホームプラスを買収以来、いかに投資金の回収を最優先してきたかを詳細に報じている。

 MBKの会長の個人資産規模が97億ドルだという米誌の報道も繰り返し引用されている。

 MBKは当初は「私財供出」を取り合わない姿勢だったが、その後態度を一変させる。

 社債の発行時期の問題も出てきて、これはまずいとでも思ったのか。