(右田早希:ジャーナリスト)
ボーイングは、中国では「波音」と表記する。「波の音」という漢字を、「ボーイン」と読ませ、エキゾチックで美しいイメージを、中国人に与えている。
ところが、3月11日に中国政府が下した決定は、容赦なかった。この日の午前中、中国民間航空局が、緊急通知を発表したのだ。
世界に先駆けボーイングに「ダメ出し」
<本日18時以降、ボーイング社の「737MAX8型」航空機の商業運行を、一時的に停止する>
3月10日、エチオピア航空の737MAX8型航空機が墜落し、乗客乗員157人全員が死亡したが、その中に8人の中国人が含まれていた。インドネシアのライオン・エアのこの型の航空機も、昨年10月29日に墜落しており、中国当局はもはや看過できないとして、異例の停止措置に踏み切ったのだ。
これによって、ボーイング社の株価は、たちまち10%も暴落し、200億ドルが消えた。だが、皮肉なことに中国の航空各社の株価は、「安全性が確保された」として、小幅上昇したのだった。
調べてみたら、中国が737MAX8型を購入したのは、2017年11月3日に、シアトルで中国国際航空に引き渡されたのが最初である。以来、中国の航空会社は、計96機も購入し、ボーイング社にとって「お得意様」となっている。内訳は、中国南方航空24機、中国国際航空15機、海南航空11機、上海航空11機、アモイ航空10機、山東航空7機、深圳航空5機、中国東方航空3機、祥鵬航空3機、奥凱航空2機、福州航空2機、昆明航空2機、九元航空1機である。
アメリカと並ぶ航空大国の中国が、先陣を切って「ノー・ボーイング(737MAX8)」を宣言したことで、その後、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル・・・と世界各国が続いたのだった。