遠隔地からの砲撃、空爆へと戦術を切り替えたロシア軍
――現在の戦況をどのように分析していますか。
マーク・ロペス氏(以下、ロペス) ロシア軍が都市を陥落できなかったため、首都キーウとウクライナ第2の都市ハルキウの状況は一変しました。ロシア軍は都市部に入ることができなかったのです。ウクライナ軍と志願兵の大隊、領土防衛隊、重武装した警察は、西側の対戦車兵器を大量に使ってロシア軍の侵攻を阻止しました。トルコ製の無人戦闘航空機「バイラクタル TB2」も役立ちました。
しかし、東部ドンバスのドネツク州とルハンスク州の環境は異なります。大きな都市はなく、小さな村や小さな都市があります。5万人から10万人の人口がありますが、キーウやハルキウのような大都市ではありません。そのため戦闘の様相が異なり、ロシア軍は戦術を変えました。
ロシア軍は30~60キロメートル以上後退して大砲やロケット弾を発射し、インフラストラクチャーを破壊し、民間人を殺戮しています。戦争の形態は一変しました。その結果、ウクライナ軍は小さな村や小さな都市、鉄道や補給路を守るために陣地を確保することになったのです。
――大砲戦になり、戦況は膠着しているのでしょうか。
ロペス ほとんど第一次世界大戦の大砲と塹壕の戦いのようなものです。ドネツクやルハンスクの一部の部隊では1日に12時間から15時間ぐらい大砲やロケット弾、空爆が行われています。しかし、膠着状態であるかどうかはわかりません。ロシア軍は何千人もの死傷者を出しながらも多くの部隊を投入しています。
最近、シベリアからの部隊がうまく戦えないので、前線から後退させられました。一部のロシア軍部隊は命令に従わずに指揮官に前進しないと伝えています。これは興味深いことです。キーウやハルキウでも同じようなことがありましたが、今はもっと多く起こっています。
しかし砲撃、ロケット弾、空爆は自らの意思で上官の命令に逆らうことはできないため、そうした戦法がとられているのです。