6月5日、東部戦線を視察したウクライナのゼレンスキー大統領(提供:Ukrainian Presidency/Abaca/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 この戦争の終わりはいつ訪れるのか。

 ウクライナでの戦争は、ロシア軍が東部に戦力を集中しているが、これにウクライナ軍も激しく抵抗し、停戦の見通しはたっていない。戦争、そして経済制裁の長期化は、石油や天然ガスなどのエネルギー資源、レアメタル、小麦などの食糧資源の供給を減少させ、物価を高騰させている。この状態が続けば、食糧不足で数百万人もの人が餓死する危険性すらあると言われている。

黒田日銀総裁の「不適切な」発言

 6月8日、OECDは、加盟38カ国の個人消費の物価上昇率が2022年には8.5%になるという予測を発表した。世界的なインフレであり、アメリカやヨーロッパは、インフレに対応する為に公定歩合を切り上げている。日本は、日銀が金融緩和政策を維持し続けているため、内外の金利差が拡大し、1ドルが134円を超える円安となってしまった。

 6月6日、日銀の黒田総裁は、東京都内の講演で、「家計の値上げ許容度が高まった」と述べた。これに対して、「庶民の生活が分かってない」と多くの国民から猛反発をくらい、8日の衆議院財務金融委員会で、「表現が適切でなかった」と陳謝し、発言を撤回した。

 20年余り前、速水優総裁の下での日銀の政策に対して、国会議員の私は、デフレからの脱却のために思い切った金融緩和、量的緩和を実行すべきだと迫り、インフレ目標の導入を提案した。その後、日銀もその方向に政策転換した。

 しかし、今の物価上昇は、日銀によるベース・マネーの拡大策によるものではない。

 原因はウクライナ戦争、そして新型コロナウイルスである。両者によって、資源、半導体などの原材料が不足したところに、円安が重なり、諸物価が高騰しているのである。