バイデン大統領(写真:AP/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 いつになったらウクライナ戦争は終わるのか――そんな不満の声が世界中で高まっている。

 ロシアの侵攻から100日も経つのに、停戦の見通しは全くたっていない。ウクライナの物的、人的被害は言わずもがな、ロシア兵の死傷者も増えている。アメリカを先頭に西側諸国はウクライナに武器支援を行い、また日本を含む多くの国が国防予算の増額に踏み切っている。

 さらには、経済制裁に伴い、ロシア産の石油や天然ガスの供給が減少し、ガソリン価格、光熱費などが世界で高騰している。さらに、ロシアもウクライナも小麦、トウモロコシ、向日葵など農産物生産大国であり、その輸出が途絶えていることは、世界の食糧事情を逼迫させている。

 軍需産業以外は誰もこの戦争で得をしていない。まさに、人類の愚行である。しかも、新型コロナウイルスの感染はまだ収束せず、それも世界経済に大きな打撃を与えている。

 いったい、いつ、どのような形で戦争を終わらせることができるのか。

ハンガリーの苦しい立場

 5月30日に開かれたEU首脳会議は、ロシア産石油の輸入禁止で合意した。ただし、対象は船で輸送される石油に限り、パイプラインによるものは除外する。そのため、総量の3分の2程度の規制にとどまることになった。

 これは、ハンガリーが反対したために、合意を優先させた苦肉の妥協案である。ハンガリーの石油のロシア依存率は59%にのぼり、これが全面禁輸されることになると、国民の生活が成り立たないからである。そのため、オルバン首相が禁輸には強硬に反対したのである。

「なぜハンガリー国民が戦争の代償を払わされるのか」という不満である。もし禁輸が実施されると、ガソリンや光熱費が大幅に値上がりするからである。世論調査によると、「対露経済制裁はEUとその経済にとって有害である」とする人が89%、また「制裁を石油や天然ガスのようなエネルギー商品に拡大する」ことに反対する人が71%にのぼっている。