米国がウクライナに供給し始めた155ミリ榴弾砲(米海兵隊のサイトより)

 ウクライナ戦争で、米バイデン政権はじめNATO(北大西洋条約機構)加盟国は、ロシアに対し厳しい経済制裁を課する一方で、侵略されたウクライナ側に莫大な資金と武器などの援助を行っている。

 ジョー・バイデン大統領は5月9日ウクライナに対する「武器貸与法」に署名し、米議会は5月10日総額400億ドル以上のウクライナに対する追加支援を承認した。

 しかし、5月20日ロシアは、南東部の要衝マリウポリを「完全に解放した」と発表し、ウクライナ兵計2439人がロシア側に身柄を拘束されたとしている。

 ウクライナ戦争の戦況推移に、米国はじめNATO諸国の巨額の軍事援助はどの程度の効果を上げたのか、あるいは今後上げると期待されるのか。

 また、軍事援助を得たウクライナ軍は今後ロシア軍を巻き返すことができるのだろうか。

憂慮されていた武器援助の遅れ

 従来からウクライナ寄りの報道姿勢を取ってきた米CNNは、今年4月18日付で、『バイデンと米同盟諸国がウクライナで直面する新たなジレンマ』と題し、以下の趣旨の警告を発している。

「ウクライナ軍は、果敢にもロシア側のマリウポリのウクライナの部隊に対する降伏要求を拒絶した」

「しかし、ロシアが米国とNATOの武器援助に対しより強硬な姿勢をとる兆候を見せているなか、バイデン大統領と同盟諸国は、米国はどこまで戦闘態勢を固めているウクライナを支援するのかという、新たな危機に直面している」

 特にCNNは、「ロシアがドンバス地区のウクライナ軍を包囲し補給路を断とうとしているなか、ウクライナがどれほど早く弾薬を消耗するかが新たな悩みの種となっている」と指摘している。

 他方で4月11日西部のリビウにも、ロシア軍によるミサイル攻撃があり死傷者が出ている。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の抑制しがたい野心を削ぐうえでの転換点に来ているとの認識に立ち、「ドンバスでの戦いの帰趨は戦争全般の今後の推移に影響しうる」との警告を発している。

 また、ウクライナは「戦争が終わるまで決してその東部地域を諦める意思はない」と表明している。

 さらにゼレンスキー大統領は、「ロシアがドンバス地区を確保すれば、プーチンがキーウを統制下に置こうとする新たな試みを必ずや目論むであろう」と述べている。

 また、その前の週に米国が表明した新たな8億ドルの軍事支援に満足しているかとの質問に対しては、「もちろん、より多くを必要としている」と返答している。

 さらにゼレンスキー大統領は、「もうこれで十分ということはあり得ない」と明言している。