米国による対ウクライナ軍事援助詳細
4月25日に米国政府政治軍事局(Bureau of Political Military Affairs)が公表した『米国のウクライナに対する安全保障協力(U.S. Security Cooperation with Ukraine)』と題する資料によれば、米国は2014年以来、ウクライナの領土の統一と国境を守りNATOとの相互運用性を向上するため、同国に64億ドル以上の軍事援助と訓練支援を行ってきた。
また2021年1月以来、米国はウクライナに対して46億ドル以上の軍事援助を行い、そのうち37億ドル以上は、ロシアの侵攻開始以降に実施されたとされている。
さらに同資料によれば、以下のような様々の形態により、米国の対ウクライナ軍事援助が行われてきた。
①緊急時大統領在庫引き出し権(Presidential Drawdown Authority: PDA)
2021年9月以来、ウクライナに34億ドルの軍事援助を米国防省の備蓄から提供するために、8回にわたり緊急時大統領在庫引き出し権が行使された。
②安全保障援助(Security Assistance)
2022年4月24日、国防省は米議会に、ウクライナと15カ国の同盟国、友好国に対し海外軍軍事資金援助基金から7.13億ドルを支出する義務があると通知した。
この通知は、NATO諸国が自国の備蓄からウクライナに対して寄付した能力をもとに戻し、NATOの抑止力を維持強化できるように、NATO同盟国を支援するためのものである。
2021会計年度においては、米国防省はウクライナに、対外有償軍事援助(Foreign Military Sale: FMS)により1.15億ドル、国際軍事教育・訓練構想により300万ドルの資金を提供した。
それらにより米国から、ロシアの侵攻前に、対迫撃砲レーダ、通信保全型無線機、車両、電子装備、小火器、軽火器、医療用補給品などが提供され、ウクライナ軍の広汎な能力が向上した。
③世界安全保障緊急基金(Global Security Contingency Fund)
米国務省と国防省が統合して行う計画であり、訓練、助言業務および装備について、ウクライナ政府が戦術的、作戦的、制度的に特殊作戦部隊、国境警備隊、通常戦力、下士官、戦闘医療能力等を発展させるのを支援するために、2014年以来4200万ドル以上の資金がウクライナに提供されてきた。
④超過防衛条項(Excess Defense Article: EDA)
2022年2月20日に米国は、超過防衛条項を使用して「ミル17ヘリ」をウクライナに移転(transfer)した。
2018年以来米国はウクライナに再改造したアイランド級沿岸警備艇を供与してきた。改修資金はウクライナの国家資金とEDAで賄われた。追加の警備艇の移管は保留中である。