最後の首脳会談なのに
それは、まったく空疎でしらけ切った会談だった。ペルーの首都リマで11月15日、16日に開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議終了後、現地時間の16日午後4時過ぎから行われた、ジョー・バイデン米大統領と習近平中国国家主席の「最後の首脳会談」である。
映像で見る限り、ホテルのだだっ広い室内で、バイデン大統領、習主席ともに、しかめっ面をしながら、紙に書いてあることを、互いにひたすら読み上げるだけだった。その間、バイデン大統領の両脇を固めたジェイク・サリバン安保担当補佐官と、アントニー・ブリンケン国務長官は、まるで石像のように固まった表情をしたままだ。それは、習主席の両脇を固めた蔡奇・党中央弁好庁主任(党中央政治局常務委員)と、王毅・党中央外事工作委員会弁公室主任兼外相(党中央政治局委員)も同様だった。
一応、中国側はバイデン大統領に気を遣って、習近平主席以下、着席した8人全員が、アメリカ民主党の党色である青色に、ネクタイの色を揃えていた。一方のアメリカ側は、バイデン大統領のみが、習主席に気を遣ってか、中国共産党の党色である紅色のネクタイを締めていた。
習近平主席は先月、ワシントンのスミソニアン動物園に「青宝」(チンバオ=青い宝)と名づけたパンダを寄贈するほど、「隠れ民主党ファン」だ。今月5日のアメリカ大統領選では、「弱々しくて行動が予測可能なバイデン大統領の後継者」(カマラ・ハリス副大統領)に、ぜひとも勝利してほしかったところだろう。
バイデン大統領と習主席の首脳会談での発言を聞いていると、長机と花輪を挟んで向かい合っている相手に対して述べているというより、むしろ「参加していない第三者」に届いてほしいという思いから発言しているように思えた。それは、来年1月20日から4年間、ホワイトハウスの主(あるじ)になることが内定しているドナルド・トランプ次期大統領だ。実際、来たるトランプ新政権のことを考えると、憂鬱(ゆううつ)で仕方ないという共通点が、両首脳にはあった。