絵本カードを作ったハリナさん(筆者撮影)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ウクライナ西部リビウ発]リビウは、ロシア軍の激しい攻撃にさらされているウクライナ東部や東南部からの避難民が多く逃れてきている都市だ。ここでは、そうした人々が失われた生活と心の平穏を取り戻すべく、必死に踏ん張っている。

 露ムルマンスク州生まれで現在はリビウで暮らす作家ハリナ・ヴィドヴィチェンコさん(62)は短編小説を執筆する傍ら、リビウやウクライナ東部ドネツク州の新聞で原稿を書いている。空いた時間を利用して元ホームレスの相互扶助コミュニティーでボランティアをしていた。

 ロシア軍がウクライナに侵攻してきてからは地元の図書館で避難民と一緒にウクライナ軍を支援するボランティア活動を続けている。

「東部ドンバスから遠く離れたリビウでも毎日、何回も空襲警報が鳴ります。昼夜を問いません。多くの人が睡眠障害に苛まれています。私は避難しなくなりましたが、自宅が9階にあり、16歳と11歳の息子と暮らす娘夫婦は今も警報がなるたび、地下のシェルターに避難しています」とハリナさんは語る。

図書館は迷彩色ネット工場だった

 何をしているのだろうとのぞいてみた図書館で出会ったハリナさんは館内を案内してくれた。そこでは濃いグリーンやブラウンの迷彩色に染めた布を裁断し、網の目に結びつけて、ロシア軍の無人航空機(ドローン)や偵察衛星の目を逃れるカモフラージュ・ネットをボランティアの市民や避難民が作っていた。

図書館はカモフラージュ・ネット工場として使われていた(筆者撮影)