マリウポリからザポリージャに避難してきたウクライナ人女性。車イスを使っての避難生活には多大な困難が伴う(写真:ロイター/アフロ)*本文と直接の関係はありません。

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ワルシャワ発]ロシア軍の攻撃で困難に直面しているウクライナの人々に、日本人の“発明”が貢献することになりそうだ。

 テコの原理を利用した人力車をモデルにした車イスの補助具で避難できないウクライナの人々を助けたいと、長野県箕輪町の福祉用具製造販売「JINRIKI(ジンリキ)」の中村正善社長がクラウドファンディングなどで集めた約4000万円を元手に、この補助具100セットを持参してポーランドを訪れたところ、「すぐほしい」という要望が相次いでいる。

 筆者と妻はウクライナの寄贈先探しをお手伝いしたご縁で5月28日~6月4日、中村氏らの「チームJINRIKI」キャラバンに同行。訪問先やミーティング設定など日程作り、通訳など会議支援、広報などを全面的にサポートした。車イスのウクライナ避難民や、その介護者は「Simple but Great(シンプルだが、大きな助けになる)」と涙を流す感動の旅となった。

シンプルな仕組みながら車イスの悩みを解消

 車イスを利用する家族がいた中村氏は2011年の東日本大震災や福島原発事故で避難したくても避難できなかった人がいたことを知り、起業を決意する。金融システムを開発する仕事を辞め、人力車のように車イスの前輪を浮かしてらくらくと引っ張れる着脱式の補助具「JINRIKI QUICK(クイック)」を開発した。国際的な特許手続きも済ませているという。

 車イスを押したことがある方なら十分にお分かりいただけるはずだが、車イスの大敵は階段だけでなく、小さな段差、芝生や砂浜など柔らかい地表だ。車イスを力いっぱい押せば押すほど小さな前輪が柔らかい地表に食い込み、身動きできなくなる。しかし車イスの前部に2本の棒を素早く装着するだけで人力車に早変わりして、そうした弱点を完全に克服できる。