笑顔の後に「違和感がある」と装着拒否
出発前からの数少ない協力者、クラクフ在住の日本人画家、宮永匡和(まさかず)さんの案内で訪れたクラクフ中央駅で早くも手応えがあった。ウクライナ避難民のための救護センターでデモを行うと、女性救護員が「シンプルだが、素晴らしい発明よ」と涙を浮かべた。駅構内で車イスを利用する避難民を移動するのに相当苦労してきたことがうかがえた。
カトリック系慈善団体カリタスが運営するポーランド東部ルブリンの支援物資デポや車イス取扱店でも反応は上々だった。カリタスのルブリン支部はウクライナ国内での需要を調べて、どれぐらいの数量が必要か連絡すると約束してくれた。車イス利用者の介護者にはそれほど説明しなくてもJINRIKI QUICKの有用性はすぐに伝わった。
ルブリンではウクライナから避難してきた障害者とその家族の短期宿泊施設も訪れた。ここにはロシア軍の攻撃を逃れるため原発があるザポリージャ州から集団避難してきた約20人が一時滞在している。列車が混んでいたため、使い慣れた歩行器や車イスを持ち出せなかった。全員が介護者や救急隊員に抱きかかえられて列車の座席やベッドに乗せられたという。
今回初めて車イスを利用する避難者に対して体験デモを実施した。しかし予想外の反応が出た。最初は笑顔を浮かべていた行動的なアナスターシャさんが「違和感がある」と言って、一度は自走用車イスに装着したJINRIKI QUICKを外すよう求めた。別の中年女性も車イスに装着しようとすると、涙をにじませ拒否した。
障害の態様や程度によって必要な移動補助器具はさまざまだ。避難民の宿泊施設も短期から長期、施設、一般住宅といろいろある。避難民の心の状態、サポートする側と避難民の信頼関係、言語の違いからコミュニケーションが取れるレベルも一様ではない。中村氏は「自走用車イスの利用者に装着する時の声掛けが十分ではなかった」と反省した。