「寝袋と非常食を持参する」と宣言してポーランド入りした日本人起業家

 中村氏はアイデアと情熱で突進する人だ。英語でJINRIKI QUICKのデモンストレーションは一通りできるものの、訪問先探しやミーティングの設定はとても無理。ポーランドでは英語である程度通じるとは言え、英語を話さない人も多い。ポーランドとウクライナの人々の中にはロシア語で意思疎通できる人がいるものの、避難民の言語は基本的にウクライナ語だ。

 筆者はジャーナリスト歴38年、妻の史子は元日本テレビロンドン支局報道プロデューサーで在英34年のベテラン。それでも現地での取材に全く不安がなかったと言えばウソになる。出発前に中村氏に「大丈夫ですか」と念を押しても、「寝袋と非常食を持参していきます」という意気込みが返ってくるだけだった。

 無茶だなと思う一方で、JINRIKI QUICKのデモ動画で車イス利用者と介護者の表情を観察すれば観察するほど心が温かくなる。これを使えばロシア軍の侵攻で塗炭の苦しみを味わわされているウクライナの人々にも笑顔が戻るのではないかと想像を巡らせた。JINRIKI QUICKは防災とリクリエーション、人道支援の一石三鳥を実現できるまさに魔法のツールなのだ。

 泥縄式というか、筆者も巻き込まれる形で芋づる式、ドブ板を踏む飛び込み営業的なキャラバンが始まった。クラクフ空港で中村氏自らがハンドルを握るレンタカーのバンにJINRIKI QUICKを100セット積み込み、後部座席に乗り込んだ筆者と妻はスマホで訪問先を探してはメールやテキストを打ちまくった。訪問先で次の訪問先を紹介してもらった。