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 ビジネスでは長らく、感情を持ち込むことは組織の冷静で合理的な運営を妨げるとされてきた。ところが近年、組織を成功に導くリーダーの素質として、EQ(感じる知性)が重視されている。リーダーシップにおけるEQの役割とは何か。『EQリーダーシップ 新装版』(ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋。組織に共鳴を起こし、業績向上や成長を実現するリーダー像を明らかにする。

 有望なリーダーと、そうでないリーダーの差はどこにあるのか。ジョンソン・エンド・ジョンソンが突き止めた、両者を分ける要素とは?

リーダーを育てる組織が長続きする

EQリーダーシップ 新装版』(日本経済新聞出版)

 EQリーダーシップはたしかに時代の要請ではあるが、組織(あるいは国家)の盛衰が一人のカリスマ的リーダーの力にかかっている、などと言うつもりはない。社会学者マックス・ウェーバーが一世紀前に主張したように、長続きする組織は一人のカリスマ・リーダーを戴く組織ではなく、組織全体にリーダーシップを醸成している組織なのだ。

 企業の場合には、とくにこの点が重要になる。何十年も繁栄する企業は、次々と新しい世代の優れたリーダーを生み出す術(すべ)を心得ている。たとえば、世界的な製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソンの次世代リーダーシップに関する研究を見てみよう。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンの成長予測を見て、CEOラルフ・ラーセンは、自社が今後も成功を続けるためにはさらに多くのリーダーが必要になる、と考えた。実際、ラーセンは、リーダーシップの育成こそがジョンソン・エンド・ジョンソンの最も重要な課題であると考えた。

 そこで、ラーセンのリサーチ・チームはまず中堅の管理職358人に注目し、そのうちすでに優れた業績をあげている約半数を「有望」グループとし、残りの半数を比較対照グループとした(358人の管理職は45パーセントが女性、55パーセントが男性で、多国籍企業らしく南北アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア、オーストラリアから平均的に選ばれた。各人に対する評価は職場での仕事ぶりをよく知っている三人の管理職が社のリーダーシップ・モデルとEQコンピテンシー・モデルにもとづいて内密におこなった)。研究者たちは、リーダーに必要なEQを全方位的に評価する「感情コンピテンシー調査表」を使って358人を評価した。