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ビジネスでは長らく、感情を持ち込むことは組織の冷静で合理的な運営を妨げるとされてきた。ところが近年、組織を成功に導くリーダーの素質として、EQ(感じる知性)が重視されている。リーダーシップにおけるEQの役割とは何か。『EQリーダーシップ 新装版』(ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋。組織に共鳴を起こし、業績向上や成長を実現するリーダー像を明らかにする。
チーム全体を前向きにし、部下の熱意を引き出せるリーダーは、なぜ“雰囲気”に気を配るのか?
負の感情がもたらすもの
『EQリーダーシップ 新装版』(日経BP 日本経済新聞出版)
慢性的な怒り、不安、無力感といった負の感情は、仕事をおおいに混乱させ、課題に向かう集中力を削いでしまう。雰囲気とその伝播に関するイェール大学の研究によれば、年間ボーナスの配分を決める重役会議は前向きな気分のもとではあきらかに能率が良くなり、後向きな気分のもとでははかどらなかった。特筆すべきは、自分たちの雰囲気が仕事の効率に影響している事実に、本人たちが気づいていなかった点である。
ある国際ホテルチェーンの例を見てみよう。このホテルで従業員をひどい雰囲気にさせるのは、何よりも管理職との対話だった。上司と言葉を交わすと、従業員は10回のうち9回まで失望や幻滅や怒りや悲哀や嫌悪や傷心など不快な気分を味わうような状態だった。
このホテルでは、顧客よりも、仕事のプレッシャーよりも、会社の方針よりも、個人的な問題よりも、上司との対話が従業員の苦痛の原因だった。とは言っても、リーダーが無理をして「いい人」になる必要はない。EQリーダーシップには、部下に不必要な動揺を与えることなしにプレッシャーをかけて必要なレベルの仕事を達成させる、といった技量も含まれているのだ。ただし、不安や心配が適度なレベルをこえると知的能力を阻害することは、昔から知られている心理学の常識だ。






