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 ビジネスでは長らく、感情を持ち込むことは組織の冷静で合理的な運営を妨げるとされてきた。ところが近年、組織を成功に導くリーダーの素質として、EQ(感じる知性)が重視されている。リーダーシップにおけるEQの役割とは何か。『EQリーダーシップ 新装版』(ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー著/日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋。組織に共鳴を起こし、業績向上や成長を実現するリーダー像を明らかにする。

 強権的な変革は、なぜ組織を混乱に陥れるのか? リーダーのEQと集団の結束力について考える。

規範がチームを害するとき

EQリーダーシップ 新装版』(日経BP 日本経済新聞出版)

 ここ数十年の研究により、集団の中で最も優秀な個人が到達する結論よりも集団全体が協力して到達する決断のほうが優れていることが証明されている。

 ただし、集団が調和や協力体制を欠く場合には、決断の質もスピードも低下する。ケンブリッジ大学の研究によると、たとえ頭脳明晰なメンバーが集まっていても、口論や内紛やパワー・プレーが横行するような集団は良い決断を下すことができない。

 要するに、集団はEQを発揮できるかぎりにおいて個人より優れている、ということだ。集団のEQにはメンバー全員のEQが反映するが、リーダーはとくに影響力を持っている。感情は伝染性があり、メンバーはリーダーの気分や行動に特別な注意を払う。

 したがって、集団の雰囲気や感情的現実(チームの一員でいることをどう感じるか)を決めるのは、リーダーである場合が多い。協力体制の構築に長けているリーダーは集団の共鳴を高いレベルで維持し、集団の意思実現のために皆が努力する雰囲気を醸成することができる。そういうリーダーは、集団が抱える課題に目を向けつつ、一方でメンバーの人間関係にも注意を払うことができる。当然、職場には友好的・協調的な風土が生まれ、メンバーは将来に向かって前向きな見通しを抱くようになる。