(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
ロシアがウクライナへ侵攻して以来、世界の食料危機が叫ばれ続けている。
ウクライナは世界第5位、ロシアは第1位の小麦の輸出国で、両国で世界の小麦の輸出量の約3割を占める。小麦の供給が不足する恐れから、侵攻開始にあわせて国際価格が上昇。ロシアが黒海を封鎖したことで、ウクライナからの小麦や、やはり世界第4位のトウモロコシの輸出が滞って、さらに深刻化している。
国連では8日に報告書を公表。「穀物価格の上昇など、94カ国の16億人が影響を受けている」とし、グテレス事務総長は「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れがある」と強い懸念を表明している。
プーチンもゼレンスキーも試み始めた「食料を人質にした戦況打開」
同じ8日、訪問先のトルコで同国のチャブシオール外相とこの問題をめぐって会談したロシアのラブロフ外相は、「輸出用船舶を安全に航行させる用意がある」としながらも、「ウクライナが機雷を除去しない」ことが原因であると主張。一方でプーチン大統領は、輸出再開と引き換えの制裁解除を求めている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、11日にアジア安全保障会議(シャングリラ会合)でオンライン形式での演説を行い、「航行の自由を損なうロシアやいかなる国の動きも止めるべきだ。制裁が必要だ」と主張。「食料不足で政治的な混乱が起きる」として、食料危機やそれに伴うアジアやアフリカ諸国での政権転覆を警告するという、脅しともとれるような発言でロシアへの制裁強化を求めた。