(3)筆者コメント

 自民党の総裁選挙候補も立憲民主党の代表選挙候補も、誰も地位協定のどこが問題だから改定すべきであると言っていない。

 まずは、改定を主張する人は、どこが、これこれの理由から問題であるから改定しようと言うべきであろう。そうしないと、国民には理解できないであろう。

 さて、石破氏の米国本土に陸・空自衛隊の訓練基地を設置する時に地位協定を締結するという話には驚いた。

 現在も陸自や空自は頻繁に合衆国で訓練している。一例を挙げれば、空自は2024年9月4日から、米ニューメキシコ州マクレガー射場とホワイトサンズ射場で高射部隊による「実弾射撃訓練」を実施している。

 この訓練は12月5日まで行われる予定である。これらの訓練は、地位協定なしで何の支障もなく整斉と行われている。

 ところで、外国における訓練と言えば、今、日本は多くの国と「円滑化協定」を締結している。

「円滑化協定」は、①共同訓練や災害対応などで相手国に一時滞在する際の出入国時のビザの取得や審査の免除、②訓練等で使用する車両や資材の取得・利用時の課税の免除、③武器弾薬の持込手続きの簡素化の3点が主な柱となっている。

 自国の運転免許証での運転を可能にするほか、訪問した隊員が事件・事故を起こした場合、公務中以外は受入国側が裁判権を持つこととされている。

 では、日本が共同訓練のため米国に滞在する時には「日米円滑化協定」が必要なのかという疑問が生じる。

 まさに、これについて国会で質問があり、浜田靖一防衛大臣(当時)は、「防衛省としては、これまで、米国における自衛隊の法的地位を定める協定がないことにより支障が生じたことがあるとは認識をしておりません」と、円滑化協定は必要がないと答弁している。

(出典:衆議院第211回国会安全保障委員会令和5年4月6日)