1. 日米地位協定の見直しに関する考え方

(1)東京新聞の政策アンケートに対する回答(2024年9月23日)

 東京新聞は、日本の法令の適用や基地への立ち入り権、基地提供の条件などを協定に明記する全般的な見直し交渉を党首の任期中に行うかどうかアンケート方式で聞いた。

 賛否を明確にしなかったのは石破氏、加藤勝信氏、茂木敏充氏、上川陽子氏、野田佳彦氏の5人である。

 ただ、石破氏は「改定の検討に着手する」と前向きな姿勢を示した。

 加藤氏も「状況に応じて交渉する」としたが、現時点での交渉は否定。

 高市早苗氏は「改定自体が政治問題化することは避ける必要がある」、茂木氏は「日米関係をうまくマネージ(管理)する」と答えた。

 上川氏は現職閣僚として政府の立場を繰り返した。

 野田氏は賛否を明らかにせず「沖縄の民意を尊重し、協定見直しや基地のあり方について米国と協議を行うべきだ」と答えた。

 見直し交渉を「する」と回答したのは、いずれも立憲民主党の枝野幸男氏、泉健太氏、吉田晴美氏の3人である。

 改定について、枝野氏は「『見ざる、言わざる、聞かざる』の現政府の姿勢では、両国民間の信頼関係が損なわれる」と指摘した。

「しない」と答えたのはいずれも自由民主党の小林鷹之氏、林芳正氏、小泉進次郎氏、河野太郎氏の4人である。

 小泉氏は、日本政府が補足協定という形で問題に対応してきたことに触れ「そうした取り組みを積み上げる」と回答。河野氏も「最適な取り組みを通じて対応したい」とした。

(2)フジテレビの報道番組の中での発言(2024年9月25日)

 本項は、テレビ報道番組での自民党総裁候補の地位協定に関する発言の要旨を筆者がテキストにしたものである。

①石破氏

・イタリアとドイツは地位協定が改定できて、なぜ日本はできないのか。これは主権国家としての問題である。

・米国本土に陸・空自衛隊の訓練基地を設置する。その時、米国と締結する地位協定は、在日米軍地位協定と同じでなければならない。

②林氏

・補足協定で改善している。運用でしっかりやらなければならない。

・(石破氏の米国本土に自衛隊の訓練基地を設置することに関して)理論上は、日米安保は米国が日本を守るその代わりに米軍が日本に駐留する。そのために地位協定がある。自衛隊が米国に行った時にこれと全く同じものになるという理屈にはならない。

③河野氏

・地位協定の中に改定した方がいいと思うものがあるが それよりも横田の空域の返還とか横田飛行場の官民共用化の方が全体としてメリットが大きい。  

④茂木氏

・現在は、事故が起こると対症療法的に補足協定や運用の改善でやっているが、現地位協定の問題点を事前に明らかにしておき、時機を見て改定交渉をすべきでる。

⑤上川氏

・補足協定や運用の改善でやるべきだと考えている。

⑥高市氏

・米国に基地を作ることに大賛成。日米で地位協定を作ることになったらそれは正当性のある平等なものでなければならない。

⑦加藤氏

・これから新しい米大統領が出てくる。日米安保に対していろいろな議論が出てくる。

 日米安保の在り方についてどうするか。それに付随して地位協定をどうするか、そういう議論が出てくる。

 今からどんな問題があるか整理しておき、しかるべき時にきちんと言えるようにして準備をしておくことが大事である。

⑧小泉氏

・地位協定の在り方だけでなく、基地従業員の待遇改善、米軍基地内に設立されている大学へ留学促進などの日々の具体的な問題に対処すべきである(筆者注:横田基地内には米国の州立大学、メリーランド大学のアジアキャンパスがあり、日本人も受け入れている)。

⑨小林氏

・発言なし(司会から発言の指名がなされなかった)。