宇宙を制する者が地上を制する時代になっていく(pixabayからの画像)

 防衛省は2023年12月5日、宇宙の安全保障に関する米英など7カ国の連合宇宙作戦イニシアチブ(CSpO: Combined Space Operations Initiative)に加入したと発表した。

 同イニシアチブは、宇宙安全保障に必要な政策・運用・体制・法的な課題等に関する各種議論を実施する多国間枠組みであり、2014年に宇宙領域把握に係る協力の強化を目的として米英豪加の4か国で開始された。

 2015年にニュージーランド、2019年にドイツ、2020にフランスが参加している。同イニシアチブの詳細は後述する。

 さて、筆者は2020年5月18日、自衛隊で初めてとなる宇宙領域の専門部隊として、府中基地に大臣直轄部隊として宇宙作戦隊が新編された時に、拙稿「自衛隊に『宇宙作戦隊』新設、その理由と狙い・・「宇宙状況監視」活動での日米協力体制強化と宇宙戦への備え」(2020年5月28日)を投稿しているが、その時点では、わずか20人の部隊であった。

 ところが、それから3年半で、宇宙領域専門部隊として米英独仏などと肩を並べるまでに成長した。事態の進展の速さに驚きを禁じ得ない。

 さらに、2023年11月11日、航空自衛隊(空自)入間基地(埼玉県)で開かれた航空観閲式に、観閲官として出席した岸田文雄首相は、訓示の中で次のように述べた。

「この大空は宇宙にもつながっている。今や、情報収集・監視・通信など、宇宙空間の利用は戦略的に極めて重要であり、21世紀はスペース・パワーの時代になりつつある」

「自衛隊の宇宙作戦能力を強化し、2027年度(令和9年度)までに航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする」

 宇宙を守ると言っても、高度約3万6000キロの静止軌道までである。ちなみに、1954年に創設された陸海空3自衛隊で名前が変わるのは初となる。

 日本には、名は体を表すという言葉があるが、筆者は航空自衛隊が名実ともに航空宇宙自衛隊になることを願っている。

 本稿では、自衛隊の宇宙作戦群を中心とした宇宙領域把握(SDA)(注1)体制整備の状況と、米国を中心としたSDAの多国間連携の枠組みである連合宇宙作戦イニシアチブについて述べてみたい。

 以下、初めに宇宙領域と安全保障について述べ、次に宇宙安全保障構想について述べ、最後に防衛省の宇宙領域把握(SDA)に関する取組について述べる。

(注1)従来はスペースデブリのような宇宙物体の軌道を把握して管理することを宇宙状況把握(SSA:Space Situational Awareness)と呼んでいたが、宇宙安全保障構想(2023年6⽉13⽇)以降は、特に自衛隊に関連する活動の場合は、宇宙領域把握(SDA: Space Domain Awareness)と呼ばれるようになった。それらの定義については第2項「宇宙安全保障構想」で述べる。