自衛隊初の宇宙部隊が新設された

 5月18日、自衛隊初の宇宙部隊となる「宇宙作戦隊」が大臣直轄部隊として約20人の隊員で新編された。

 2023年度までに100人規模に増強され、本格運用を開始する。公表資料によると、「宇宙作戦隊」は宇宙状況監視システムを運用するなど、宇宙空間の安定的利用の確保に資する活動を実施するとある。

 今年度予算には宇宙空間の状況を監視する人工衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)の導入費(33億円)を初計上し、2026年度までの打ち上げを目指している。

 将来的には宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米宇宙軍(U.S. Space Force)などとも連携して、「宇宙状況監視システム」を整備していく予定である。

 筆者は、今回の「宇宙作戦隊」の創設の狙いは、「宇宙状況監視(SSA:Space Situational Awareness)」活動における日米協力体制の強化と宇宙戦への備えの2つがあると見ている。

 前者の「宇宙状況監視」機能は、後者の宇宙戦遂行の基盤となる機能である。

1.「宇宙状況監視」活動における日米協力体制の強化

「宇宙状況監視」活動における日米協力体制の強化は、国際公共財(グローバル・コモンズ)である宇宙空間の安定的利用を確保するための国際貢献に通じるものである。

 宇宙状況監視とは、衛星破壊実験や人工衛星同士の衝突等により生じた宇宙ゴミ(スペースデブリ)の人工衛星への衝突等を回避するための監視活動のほか、人工衛星や地上の電子機器に影響を及ぼす可能性のある太陽活動や、地球に飛来する隕石などの脅威に対する監視活動をいう。

 ちなみに、「地球の周りを回っている人工衛星の数は2017年時点で約4400機以上、スペースデブリの数は2010年時点で10cm以上のものが約2万個、10cm未満1cm以上は50万~70万個あると考えられている。1cm以上のデブリが衝突すると人工衛星などに壊滅的な被害を与える可能性がある。そのため、推進系を搭載している人工衛星や宇宙ステーションは、地上から観測・追跡されているスペースデブリとの衝突が予測されると、衝突しないように軌道を変更する。(出典:JAXA)」

 さて、宇宙状況監視についての日米協力は、これまでにも大きく進展している。

 米側の米戦略軍の連合宇宙運用センター(CSpOC:Combined Space Operations Center)(旧統合宇宙運用センター:JSpOC)と日本側のJAXAとの間で、宇宙物体の軌道に関する情報の共有が既に行われている。