新型コロナウイルス感染症の蔓延で人気のなくなった世界的観光地のイタリア・ベネチア(4月16日、写真:ロイター/アフロ)

 医療崩壊を起こしているイタリアでは、80歳以上の高齢者に対する治療を断念するという衝撃的なニュースが報道された。

 英国デーリー・テレグラフ紙のオンライン版は3月14日、「イタリアのピエモンテ州の市民保護局が作成した『緊急事態下の集中治療へのアクセス基準』案では『年齢80歳未満』としている。政府関係者によると、この基準はイタリア全土で適用される見込である」と報じた。(記事の詳細は後述)

 さて、日本においても新型コロナウイルスの感染者が急激に拡大し、それに伴い重症患者の入院患者数が増大すれば、当然のこととして病床数、医療機器(人工呼吸器など)および医療従事者(気管挿管の専門医やICUの看護師)が不足する事態が発生することは予想できる。

 そして、人工呼吸器が必要になる患者の数が使用できる人工呼吸器の数を大きく超えた時に、重症患者の治療に必要な医療機器(人工呼吸器等)を誰に割り当てるかが問題となる。

 ちなみに、日本の治療用人工呼吸器の取扱台数は、2万9609台で、内訳は人工呼吸器が2万2254台、マスク専用人工呼吸器が5943台、ECMO装置が1412台である。

 都道府県別取り扱い台数では、最大が東京で3998台、最小が石川県で132台である。このように都道府県格差が大きい。

(出典:日本呼吸療法医学会・日本臨床工学技士会2020年3月9日)

 1台当たりの人口(人)は全国平均で約4250人となる。感染の流行がピークに達した時に各地で重症患者の治療に必要な人工呼吸器が不足することは明らかである。

 その時、各医療機関では人工呼吸器を重症患者にどのような優先順位で割り当てるのであろうか。さらに、政府は、人工呼吸器を各都道府県にどのように配分するのであろうか。

 病床数や医療従事者数の現在数は不明であるが、必要であればこれらの配分も検討されなければならないであろう。

 本稿は、日本や諸外国の「人工呼吸器の割り当ての考えかた」について取りまとめたものである。何らかの参考になれば幸いである。