(2)SDAの強化

 2023年3月16日からSDA情報の集約、処理、共有等を行う運用システムの本格運用を開始した。

 これに併せて、宇宙作戦群から民間事業者に対し、他の衛星、スペースデブリなど、宇宙物体の軌道情報等に関する情報の提供を開始した。

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)や米国との情報共有も開始した。

 今後、宇宙設置型光学望遠鏡(SDA衛星)およびレーザー測距装置を新たに導入する。

 将来のSDAの運用イメージは図2のとおりである。

図2:SDAの運用イメージ

(出典:内閣府ホームページ「防衛省の宇宙領域把握(SDA)に関する取組」2023年11月28日)

▲SDA衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)の整備

 現在防衛省が運用している地上設置型のDSレーダー(自衛隊が整備した宇宙領域把握用のレーダーはDSレーダーと呼ばれる)では、衛星の能力や機能・性能等の特性を把握することが困難である。

 地上設置型の宇宙監視センサーでは把握することが困難な相手方の宇宙機の運用・利用状況およびその意図や能力を把握するためのSDA衛星を整備する。令和8(2026)年度に打上げを予定している。

▲電磁妨害状況把握装置の整備

 宇宙空間の安定的な利用を確保するため、我が国が利用する各種衛星に対する電磁妨害の状況を把握することを目的として、電磁妨害状況把握装置を整備する。

 当該装置は、航空自衛隊第2宇宙作戦隊(防府北基地)の装備品として運用され、我が国の利用する衛星を広くカバーするため、東日本、西日本および南西方面に一式ずつ展開させることが想定されている。

 なお、本装置は配備基地以外の演習場等に機動展開させることも想定されている。

 電磁妨害状況把握装置1型および電磁妨害状況把握装置2型は現時点(2024年8月)で既に運用を開始している。

▲JAXAとの役割分担

 JAXAは1980年代に国立天文台と望遠鏡を用いた宇宙物体の観測の共同研究を実施し、その後2000年代に入り、一般財団法人日本宇宙フォーラムが建設した美星スペースガードセンター(光学望遠鏡)と、上齋原スペースガードセンター(レーダー)によるスペースデブリ観測データを用いた解析等の技術開発を開始した。

 2017年4月には、今後ますます重要になるSSA活動に向けて、この光学望遠鏡とレーダーをJAXAに移管し、2023年にはリニューアルし、運用を開始した。

 JAXAは、地球に近い高度200~1000キロの低軌道帯(地球観測衛星などの軌道)を観測するレーダーを運用している。

 他方、宇宙作戦群は、探知距離約4万キロ(静止軌道帯)のレーダーを運用している。

 従って、JAXAは、約1000キロの位置にある低軌道衛星を主に監視し、宇宙作戦群は、地球から3万6000キロの静止軌道にある静止衛星を主に監視する。