(3)「連合宇宙作戦ビジョン2031 (Combined Space Operations Vision 2031)」の要旨

「連合宇宙作戦ビジョン2031」は、「Vision」「Mission」「The Importance of Space」「Shared Guiding Principles」「Objectives」「Lines of Effort」「Conclusion」の7項目で構成されている。

 関係国間での宇宙での協力をさらに推進し、宇宙での安全保障を確かなものにすることを目指すと述べている。

 同ビジョンの要旨は次の通りである。筆者の翻訳による。

▲ビジョン(Vision)

 国家安全保障上の宇宙作戦におけるパートナーは、責任あるアクターとして、適用される国際法に基づき、敵対的な宇宙活動から(資産を)保護・防衛するための準備を追求する。

▲任務(Mission)

 協力、調整、および相互運用性の機能を整備・改善し、宇宙での行動の自由を維持し、資源を最適化し、任務保証(Mission Assurance)(注2)と回復力を強化し、紛争を防止する。

(注2)任務保証(Mission Assurance)とは、任務遂行上不可欠な機能を維持するために必要な能力およびアセット(人材、装備、施設、ネットワーク、情報システム、インフラ、サプライチェーンを含む)の持続性と強靱性を確保するプロセスのこと(出典:経産省「重要インフラ等に係るサイバーセキュリティ政策の概要」)。 簡単に言えば、任務を着実に遂行するために必要となる能力及び資産を確保すること。

▲宇宙の重要性(The Importance of Space)

 宇宙は現代の多領域の軍事作戦に不可欠であり、戦略的な優越を提供する。

 宇宙基盤の機能は、通信、ナビゲーション、リモートセンシング、地球観測、気象サービスおよび金融取引などの日常生活を支える幅広い効果をもたらす。

 これらの機能の利用可能性を維持およびサポートすることは、各国の利益になる。

 これらの機能を継続的に提供するには、宇宙への完全なアクセスと宇宙での運用の自由が不可欠である。

▲共通の指導原則(Shared Guiding Principles)

 以下の指導原則は、連合宇宙作戦イニシアチブの覚書(MOU)において参加者間で広く共有されている。

①宇宙利用の自由

 軍は、宇宙へのアクセスと使用の自由を確保するための国際的な取り組みに貢献する上で重要な役割を果たしている。

②責任ある持続可能な宇宙利用

 世界は宇宙基盤のシステムに依存している。宇宙での活動は人間の活動範囲の全域に影響を及ぼす。

 CSpO参加者は、長寿命のスペースデブリの発生を最小限に抑え、宇宙空間環境の永続的な持続可能性に貢献する活動に努力する。

③主権を維持しながらのパートナーシップ

 CSpO参加者は、各参加者が自らの国家政策と利益に見合った方法で独立して行動する権利を認め、支持する。

 各国の取組みは、必要に応じて、明確でオープンな対話を通じてシンクロされる。

④国際法の遵守

 各参加者は、宇宙条約、国連憲章、そして武力紛争の場合には武力紛争法など適用される国際法に準拠して活動する。

▲目標(Objectives)

 我々のビジョンと任務(Mission)を実現するために、CSpO参加者は、国家的および集団的行動の指針となる以下の目標を設定した。

①紛争の防止:CSpO参加者は、宇宙に影響を及ぼす紛争または宇宙で始まる紛争の防止に努力する。

②努力の統合:CSpO参加者は、戦略レベルから作戦レベル、戦術レベルに至る複数のレベルの情報を共有することによって連合宇宙作戦を可能にする。

③宇宙任務保証(Space Mission Assurance):CSpO参加者は、宇宙領域への敵対活動に直面しても継続して宇宙任務を可能にする堅牢で、適応性があり相互運用性のある宇宙インフラを確立および維持することに努力する。

④防衛と保護:CSpO参加者は、国益と宇宙領域の防衛と保護にコミットする。

▲努力の集中(LOE:Lines of Effort)

 CSpO参加者は、以下に述べるいくつかのLOEを通じて、上記の共通の目標の達成に努力する。

①回復力があり、相互運用可能なアーキテクチャの開発および運用

②指揮・統制・通信機能およびその他のCSpO参加者間の作戦上の連携の強化

③宇宙における責任ある軍事行動の促進

④戦略的コミュニケーション活動

⑤インテリジェンスと情報の共有

⑥宇宙幹部の専門職化(筆者注:自衛隊には、既に「宇宙職域」が新設されている)

▲結論(Conclusion)

 CSpO参加者は、国家的および集団的利益を達成するために、我々の共通の指導原則に基づき、上記の目標とLOEを追求することにコミットする。