3.防衛省の宇宙領域把握に関する取組み

本項は、防衛省が作成・発表した「宇宙領域把握(SDA)に関する取組」(2023年11月28日)を参考にしている。

(1)宇宙作戦群の沿革

・2020年5月18日に、我が国の宇宙利用の優位を確保するため、航空自衛隊府中基地に大臣直轄部隊として「宇宙作戦隊」を約20人で新編。

・2022年3月17日に、宇宙領域専門部隊の体制を強化するため、「宇宙作戦群」を70人規模で新編。

 指揮官を支える群本部、宇宙作戦の指揮統制を担う宇宙作戦指揮所運用隊および宇宙状況監視を担任する第1宇宙作戦隊(府中基地、宇宙作戦隊を改編)で編成。

・2023年3月17日に、第2宇宙作戦隊(防府北基地)および宇宙システム管理隊(府中)を新編し、120人規模に増員。

・2024年3月29日に、第1および第2宇宙システム管理隊(防府北基地)を新編。

 宇宙システム管理隊を第1宇宙システム管理隊に改編。

・2024年度末に、宇宙作戦群を320人規模に増員予定。

 宇宙作戦群の使命は、「日本にとって望ましい宇宙環境の維持・獲得」である。

 また、任務は、「宇宙空間における安全保障環境の形成や、宇宙空間や地球上における武力攻撃の抑止、宇宙空間の安定のための対処」である。

 宇宙空間の安定的利用に対する脅威は、スペースデブリと衛星への攻撃である。

 衛星にスペースデブリが衝突すると甚大な被害を引き起こす。衛星を無力化する攻撃には、次のような攻撃方法が想定される。

▲宇宙からの攻撃(共通軌道方式の攻撃)

 地上から打ち上げた衛星攻撃衛星(いわゆる「キラー衛星」)を目標となる衛星と同じ軌道(共通軌道方式)に遷移させ、接近させて、アームまたはネットで捕獲したり、電波を放射し通信妨害(ジャミング)したり、高出力マイクロ波を照射し機能を喪失させる。

▲地上からの攻撃

・地上から目標となる衛星に弾道ミサイルを発射し、衛星を破壊する。(直接上昇方式 の攻撃)

・地上から目標となる衛星にレーザーを照射し機能を喪失させる。

・地上から目標となる衛星に電波を放射し通信妨害する。

・地上から地上の管制施設にサイバー攻撃を仕掛ける、などである。

 ところで、宇宙作戦群の編制図は図1のとおり。

図1:宇宙作戦群の編制図

筆者作成

 このうち、第1宇宙作戦隊(府中基地)はSDAシステムの運用を担当し、空自防府北基地レーダー地区に整備されたDSレーダー(探知距離約4万キロ、複数目標を同時追尾)の遠隔運用も行う。

 また、第2宇宙作戦隊(防府北)は電磁妨害状況把握装置の運用を行う。

 さらに、空自において、2026年度までの打上げを目標とするSDA衛星(宇宙設置型光学望遠鏡)などの導入にかかる取り組みを進めている。

 今後、宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)体制の整備を確実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、2027年度(令和9年度)までに航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする計画である。