4.連合宇宙作戦イニシアチブ

(1)連合宇宙作戦イニシアチブ(CSpO: Combined Space Operations Initiative)発足の経緯

 2007年1月、中国は、老朽化した自国の衛星を地上から発射したミサイルで破壊する実験を行った。

 宇宙が戦闘領域に変わった瞬間であった。

 しかし、米国が宇宙が戦闘領域に変わったことを公式に認めたのは、2018年3月に公表した「国家宇宙戦略」であった。

 さて、CSpOに関する米豪加英による取り組みが始まったのは、2009年に米空軍が主催し、豪加英の国防当局も参加したウォーゲーム「シュリーバー演習」と見られる。

「シュリーバー演習」は2001年から米空軍宇宙コマンド(AFSPC)が主催する概ね10~12年先の将来を想定した宇宙空間での作戦に係る多国間の机上演習である。

 2010年の同ウォーゲームの最終報告書は、宇宙に関する常設の連合統合任務部隊と連合宇宙作戦センターの設置を提言している。

 その翌年に開催された「シュリーバー2010」においても、米豪加英の4カ国による連合宇宙作戦を想定したウォーゲームが実施されている。

 ダグラス・ロヴェロ(Douglas Loverro)米国防次官補代理(当時)によれば、2011年11月に米国防長官室と戦略軍が共催した「連合宇宙協力フォーラム」において、CSpOの土台となる議論が同盟国間で行われた。

 その後、これらの4カ国は連合宇宙作戦の価値に関する本格的な検討を 2012年2月に開始し、同年9月には検討結果に基づいて、より緊密な連合宇宙作戦に向けて作業を続けることで合意した。

 そして、2014年5月に共同声明「連合宇宙作戦に関するパートナーシップ」を発表し、2014年9月、米豪加英の国防当局は、CSpOに関する了解覚書(MOU)を締結した。

 その後、2015年にニュージーランド、2019年にドイツ、2020年にフランスが参加した。

  2022年2月22日、米国防総省が6カ国(豪、加、仏、独、英、ニュージーランド)と共に「連合宇宙作戦ビジョン2031」と名付けた文書を作成・発表した。