2.宇宙安全保障構想

 本項は、宇宙安全保障構想(2023年6⽉13⽇宇宙開発戦略本部決定)を参考にしている。

(1)宇宙安全保障上の目標

 宇宙安全保障の目標は「我が国が、宇宙空間を通じて国の平和と繁栄、国民の安全と安心を増進しつつ、同盟国・同志国等とともに、宇宙空間の安定的利用と宇宙空間への自由なアクセスを維持すること」である。

 これを達成するためには、安全保障にとって不可欠な宇宙システムを守る「宇宙からの安全保障(安全保障のための宇宙システム利用の抜本的拡大)」と、拡大する宇宙空間における脅威・リスクに対し、我が国の経済社会にとって不可欠な宇宙システムを守る「宇宙における安全保障(宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保)」という2つの考え方が基本となる。

(2)宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保(宇宙における安全保障)のための方策

 宇宙空間の安全かつ安定的な利用の確保のためには、

①宇宙領域把握等の充実・強化(宇宙領域把握等)、

②軌道上サービスを活用した衛星のライフサイクル管理 、

③不測の事態における政府の意思決定・対応、

④宇宙空間における国際的な規範・ルール作りへの主体的な貢献 の4つの方策が必要である。

▲宇宙領域把握等の充実・強化(宇宙領域把握等)

 宇宙物体の位置や軌道等の情報を把握する宇宙状況把握(SSA: Space Situational Awareness)に加え、宇宙物体の運用・利用状況およびその意図や能力を把握する宇宙領域把握(SDA: Space Domain Awareness)の機能を充実・強化する。

 SDAについては、地上レーダー、光学望遠鏡および衛星妨害状況把握装置に加え、新たにを保有・運用するとともに、他国の動向等を踏まえつつ、SDA衛星の複数機運用を検討する。

▲軌道上サービスを活用した衛星のライフサイクル管理

 宇宙空間が戦闘領域化していく中で、大型の各種静止衛星や高機動の推進技術を必要とするSDA衛星の長期的・経済的な運用に資するため、衛星の延命のための推進薬補給技術などの軌道上サービス技術を早急に確立し、これらの技術を活用して、衛星のライフサイクルを適切に管理していく。

▲不測の事態における政府の意思決定・対応

 関係府省庁と自衛隊、民間事業者が情報を共有する体制、また、内閣官房、内閣府、防衛省・自衛隊などが情報収集・分析・共有する体制、政府としての意思決定を実施するための体制を整理・強化する。

▲宇宙空間における国際的な規範・ルール作りへの主体的な貢献

 国連等における議論に積極的に貢献し、同盟国・同志国等との協力を通じて宇宙空間における責任ある行動に関する規範形成に主体的な役割を果たし、安全保障の観点も含め宇宙利用に係る国際的な規範・ルール作りを推進する。