2024年8月7日、「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」のこれまでの議論の整理(論点整理)が公表された。論点整理の詳細は後述する。
2024年9月10日、自民党は「能動的サイバー防御」に関する提言を首相へ提出した。
岸田文雄首相は10日、自民党経済安全保障推進本部の甘利明本部長らと官邸で会い、「能動的サイバー防御」の法制化に向けた提言を受け取り、「できるだけ迅速に対応できるよう取り組みたい」と述べた。
同席した小野寺五典安全保障調査会長は記者団に、「日本の安全保障上、速やかに法整備に移ることが極めて重要だ」と強調した。
ところで、2022年12月16日に閣議決定された「国家安全保障戦略2022」は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を導入する方針を掲げた。
同戦略は、能動的サイバー防御の導入に向けた取り組みとして、
①民間企業のサイバー攻撃被害の情報共有と、政府による企業支援の強化
②サイバー攻撃の兆候や発信源の探知・把握
③攻撃元のサーバへの侵入・無害化の3本柱を掲げた。そして、早期の関連法案の成立を目指すとした。
当初、政府は2024年1月召集の通常国会へ関連法案を提出する方針であったが、憲法が保障する「通信の秘密」とどう整合性を取るかなどの法整備に向けた議論が遅れ、現在は秋の臨時国会への提出を目指しているとの報道がある。
この間、国民民主党は2024年4月24日、国民民主党議員立法「サイバー安全保障を確保するための能動的サイバー防御等に係る態勢の整備の推進に関する法律案」を参議院に提出している。
本稿では、能動的サイバー防御に係る態勢整備の動向と課題について述べてみたい。
以下、初めに能動的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)とは何かについて述べ、次に能動的サイバー防御の実施のための体制整備のこれまでの経緯について述べる。
次に、「能動的サイバー防御」の法整備に関する有識者会議の論点整理の概要について述べ、最後に自民党の「能動的サイバー防御」に関する提言の概要について述べる。