4.自民党提言の概要

 自民党は、提言の内容を公表していないようである。

 従って、本項は、読売新聞2024年8月29日付「サイバー防御へ、平時から『外国関連』の通信監視を…自民党提言案」を参考にしている。

(1)提言の概要

 自民党は8月29日、「能動的サイバー防御」に関する提言をまとめた。提言は、官民連携、通信情報の利用、侵入・無害化の3分野からなる。

ア.官民連携

 官民連携の強化では、電気や通信などの基幹インフラ事業者が攻撃を受けた場合、政府への報告を義務化することや、政府と事業者などによる情報共有枠組みの創設を盛り込んだ。

イ.通信情報の利用

 通信情報の利用については、「サイバー攻撃の分析に必要不可欠な外国関連の通信を対象とする」とした。

 その上で、国内間の通信は「国民のプライバシー保護の観点から、除外すべきだ」とし、メール本文のメッセージなど「コミュニケーションの本質的な内容」は「分析対象から除外すべきだ」とも指摘した。

ウ.侵入・無害化

 侵入・無害化措置に関しては、防衛省・自衛隊と警察を「実施主体」とすべきだとした。

 外国政府が関与する高度で重大なサイバー攻撃にシームレスに(継ぎ目なく)対応するため、「新たな自衛隊の行動類型を整備すべきだ」と促した。

(2)筆者コメント

 政府は、能動的サイバー防御で平時の段階から自衛隊に侵入・無害化措置を行う権限を付与するため、自衛隊法などを改正する方向で調整していると報道されている。

 しかし、筆者には、法整備しても日本に侵入・無害化措置を相手に探知されずに遂行するだけのサイバー技術力があるのかが心配である。

 その理由は次の「おわりに」で述べる。