
いらつくトランプ、正論ぶつプーチン
2月に始まった米露間のロシア・ウクライナ紛争停戦交渉は、米大統領・D.トランプとロシア大統領・V.プーチンの電話会談を挟んで3月も続けられ、そして4月に入ってきた。
一時は、復活祭(4月20日)やトランプの大統領就任100日目(4月29日)が停戦達成の日取りとして挙げられたものだったが、これからの具体的な交渉日程は米露双方からまだ発表されていない。
もし全面停戦には至れずでこの4月が過ぎ行くなら、その先はどうなるのだろうか。
業を煮やしたトランプがキレて対露融和策を御破算にするのか、そのキレるタイミングを読み取ってプーチンが有効な対応に回るのか、はたまた、そのいずれもが起こらずに5月以降の交渉延長戦に入って行くのか ――。
そのどこに球が転がって行くのかは、両首脳の判断と決断次第にかかってくる。
停戦工作の成就を急いでいるトランプは、早期の米露首脳会談によるトップダウンでの決着を頭に描いていたようだ。
だが、ロシア側がやや慎重な反応を示すと、2000キロに及ぶ戦線での30日間全面停戦実施案を持ち出してきた。そして、まずはウクライナにそれを吞ませている。
この時限付き全面停戦案に対してプーチンは、各論での問題点をまず潰しながらという、交渉の常識論に沿った進め方を提示した。
トランプが実務レベル協議の先行というやり方に、いつどのように切り替わったのかは定かではないが、3月の対露交渉はイスラエル/ハマス紛争の停戦案でも採用された段階方式に従っている。
米大統領補佐官・M.ウォルツ(国家安全保障問題担当)によれば、それは第1段階の陸上での部分停戦、第2段階の黒海での安全航行確保、そして第3段階の陸上での全面停戦となる。
ロシアが時限付き全面停戦案を即座には受け入れなかったことから、これはプーチンが和平など目指していない証左だ、とかの非難がウクライナや西側から出た。
だが、その非難する側も停戦論を批判し拒絶して来た経歴これありなのだから、戦況が有利なら押せ押せ、不利なら平和論喧伝、という御都合主義に聞こえなくもない。
前政権とは異なりウクライナに肩入れしそうもないトランプである。
その彼が言い出した停戦案なのだから、本来なら賞賛などしたくもないのだが、対米関係を考えればそうも行かない――ならば、その停戦案の部分だけ切り取ってでも対露批判の材料に、ということなのだろうか。