国内で支持率が低下し指導力に黄信号が灯っているウクライナのゼレンスキー大統領(写真は12月17日、ポーランド国境のリヴィウ地域を訪問しポーランド首相と会談したときのもの、ウクライナ大統領府のサイトより)

漂い始めた紛争の出口らしき気配

 残りわずかの2024年に続き2025年ともなれば、ロシア・ウクライナ紛争の勃発から丸3年に近付く。

 そして、この紛争にも出口らしき気配が漂ってきた。

 年明けの1月に米国ではD.トランプ政権が発足する。

 現政権のJ.バイデン大統領がウクライナに肩入れしてきたこの紛争が、新政権によってようやく終止符を打たれるという予想が広まり、ロシア、ウクライナ、その他の関係諸国は皆その対応に動き始めている。

 停戦が予想されるのは、このトランプ新政権の登場だけが理由ではない。ウクライナの継戦能力に限りなく赤に近い黄信号が灯り、青色にはもう戻れないのでは、と多くに思われつつある。

 2023年の反転攻勢の失敗以来、ウクライナ軍が東部や南部でロシア軍を押し戻せない戦況が続いている。

 北部で2024年8月に敢行したロシア領クルスク州への侵攻も、精鋭部隊を投入したと喧伝されたにしては短期間でその前進が止められてしまい、今ではロシア軍の逆攻勢に晒されている。

 国力で勝るロシアを相手に、武器と兵員の不足が顕著になったことが、戦局利あらずの直接の原因のようだ。

 欧米のウクライナへの武器援助は必ずしも計画通りには運ばず、同国内での新規徴兵もうまくは行っていない。

 戦局好転の見通しが立たず将来の絵姿が描けなくなれば、当然ウクライナ国民の士気も落ちてくる。

 徴兵忌避や戦線での逃亡兵増加はもはや隠しようがなくなり、報道によれば対露和平交渉に進むべきと考える国民の割合も5割を超えた。

 この状況を見れば、これまでウクライナを兵器や資金で支えてきた欧州諸国も、対露戦勝利はもはや夢物語で、代わりに現実的な停戦とその後の安保体制構築に向けて動くしかないと考えて当然なのだろう。

 その中でウクライナ勝利への悲観論を決定付けたのは、上述のウクライナ軍によるロシア領クルスク州への侵攻作戦だったように思われる。

 この作戦については当初から、何の意味があるのかと問う指摘が西側諸国からも多々出ていた。

 それに対して、ロシアに東部戦線の兵力分散・転戦を余儀なくさせてその攻勢を弱める、あるいは停戦を見込んで奪われた東部・南部の領土との引き換え交渉に持ち込む材料つくり、といった解説がウクライナや西側の論者から出された。

 しかし、いずれの理由付けも、どこかすんなり納得できないものが残る。