支持率急低下がゼレンスキーの手足縛る
そしてその意図がどうあれ、ロシアはウクライナの見込み通りには動かず、逆にウクライナ軍は東部戦線での増強を怠ったことで、ロシア軍の快進撃を招いてしまった。
この作戦の立案者が誰で、ウクライナのV.ゼレンスキー大統領や米国がどこまで深く関わったのかは不明だ。
しかし、結果を見たことで、ウクライナが物量面での劣勢のみならず、戦術・戦略の立案・実施の面でもまともに戦えていない、という評価を西側内部に生んでしまったのではないか。
そうなると、ゼレンスキー大統領以下が米欧に対してどれだけ「勝利計画」(ウクライナのNATO加盟や対ロシア攻撃および抑止力構築などが主眼)を口説いて回っても、不発に終わるしかない。
この計画を引っ提げて、グローバル・サウス諸国他160か国のウクライナ応援団結成を目論んだものの、その舞台となるはずの「平和会議」は開催されることがなく、事実上その案が潰れた状態のようだ。
国内での支持率が大きく下がってきたゼレンスキー大統領は追い詰められる。
最近ではメディアに対して、NATO(北大西洋条約機構)加盟が即叶うならロシアの占領地域の奪還は武力によってではなく外交で、と表明せざるを得なくなっていた。
領土奪還への戦闘継続の旗を、取りあえず、であろうと降ろさざるを得なくなったのだ。
では、停戦に向けてこれからどのような動きになるのか。
トランプ次期大統領はロシアのV.プーチン大統領との会談を行う意向を示し、プーチン氏も「望むところだ」というサインを送っている。
両者が会うとなれば、ウクライナにとって有利な条件で話が運ぶとは予想されていないから、危機感を持ったウクライナや1月20日までは政権の座にあるバイデン大統領が、残されたわずかの日々で何かを新たに仕掛ける可能性はまだ残っている。
だが、長距離ミサイルをロシア領内部へ撃ち込んでも、ドローンでの攻撃を多発させても、あるいはロシア要人へのテロ行為を繰り返しても、トランプの大統領就任までに戦局を一変させることはまず見込めないだろう。
一部の米誌やそれを受けた日本のメディアは、ウクライナ軍のミサイルやドローンによる攻撃での成果を、映像を交えて頻繁に伝えている。
ロシア敗北の可能性がまだ残ると言わんばかりだ。
しかし、全戦線でウクライナ軍が押されている中では、負けが込んできても自国軍が果敢に戦う姿を伝えていた1944年のドイツや日本の週間ニュース映画を改めて見せられているかのように思えてしまう。
とは言え、敗色濃厚のウクライナが脇に置かれた格好で米露首脳会談が開かれたとしても、簡単に停戦というわけにはいくまい。