2024年12月15日、ソウルの公邸で演説をする尹錫悦大統領(写真: (c)Kim Jae-Hwan/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ )

(韓光勲:ライター、社会学研究者)

 韓国の民主主義は不安定である。今回の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳事態」から、大統領の弾劾訴追までの一連の動きを見て、改めてそう思った。

 朝鮮半島の政治を見ていると、北朝鮮の方が政治的に安定しているのではないかと思えてくる。北朝鮮の指導者は基本的にずっと変わらないので、外交政策は一貫しており、その行動原理を読み解くのはそう難しくない。

 一方の韓国は、外交政策も国内政治もコロコロ変わる。なかなか安定しないのである。文在寅前大統領が南北宥和に動いたと思ったら、たった5年で政権が進歩派から保守派に変わり、外交政策が180度変わった。尹錫悦大統領は北朝鮮との交渉に懐疑的で、日米韓の連携を強める政策をとった。

 正直、北朝鮮の指導者には同情したくもなる。こんなに政治情勢がコロコロ変わる国を相手にするのは大変だ。左から右に一気に振れる国とは、外交交渉なんてできない。信用していたはずのカウンターパートの首が一気に切られる可能性が潜在するのだから、長期的な交渉なんてできないのである。

 だから、北朝鮮が憲法を改正して「統一」の文字を削除し、韓国を「敵対国」と位置づける動きは、非常に合理的である。こんなに政治情勢が不安定な韓国とはさっさと決別して、自国の安全保障のための行動を取る。北朝鮮の外交政策はそんなシンプルな原理で動いているので、理解はたやすいのだ。

 南北の政治情勢を比較して、北朝鮮の政策の方が理解可能なのは皮肉なことである。