この制度がいいのは、議会には、大統領を弾劾するインセンティブ(動機・誘因)があまり働かないことである。もちろん、ウォーターゲート事件のようなことがあれば弾劾はするが、代わりに副大統領が昇格するので、すぐに選挙とはならない。態勢を立て直すための一定の猶予期間がある。
韓国には、副大統領がいない。代わりに首相がいるが、議会の半分が賛成すれば弾劾されてしまう。立場的には非常に弱い。
大統領を弾劾すれば、実質的には「野党の勝ち」になってしまうので、野党は弾劾を目指して頑張るのだ。
韓国の大統領制のもう一つの問題は、任期が短いことである。憲法上、大統領の任期は1期5年とされている。これは、2期8年までできるアメリカと比較すると、やはり短いと思う。
1期5年では何が起きるかというと、最後の1~2年はあまり何もできない、いわゆるレームダック(死に体)状態に陥りやすくなる。特に、任期途中にある議会選挙で野党が多数派をとると、その途端に内政では何もできなくなるのだ。
つまり、韓国の大統領の権限は強すぎるか、弱すぎるしかないのだ。「0か100か」である。中庸がない。これを「ダイナミック」と評価するか、不安定と評価するかは意見が分かれるだろうが、いまの情勢を見ると、不安定としか言いようがないと思う。
民主主義の大先輩に学ぶべき
では、今回の騒動の教訓を考えてみたい。
筆者は、韓国は憲法を改正して、アメリカ型の副大統領制を導入し、さらに大統領の任期を2期8年にするべきだと考えている。実は、韓国では建国直後の1948年から1960年まで、副大統領が存在していた。今でもやれないことはないだろう。
大統領を2期できるのであれば、ある程度一貫した政策を遂行できる。外交面では任期が長い方が絶対に有利である。