日本では国民が直接デモに行かなくても、政治家が代わりに国会でしっかり働いてくれているのである。先の衆議院選挙では自民党が少数与党となったが、国会は荒れるどころかむしろ対話の場として機能し、政治資金の問題についても一定の回答が出つつある。このことは誇りに思うべきことだろう。
韓国の不安定な民主主義を持ち上げるのは大間違いだ。日本の代議制民主主義が機能していることを卑下すべきではない。
韓国の民主主義はいかにも不安定で、外交の場ではとても信用できるカウンターパートとは見なされない。筆者は韓国籍であるが、外交について長年勉強してきたので、この評価しかできない。外交政策を評価する際は感情を排して、徹底的にその国の情勢を冷静に見極めるべきだと学んできた。悲しいとは思うが、それが現実である。
副大統領の不在、短い任期
では、なぜ韓国では、弾劾訴追が頻発するのだろうか。
筆者が不思議なのは、韓国の野党「共に民主党」が先の選挙で多数を獲得してから、一貫して大統領の弾劾を目指していたことである。
同じ大統領制のアメリカではこうはならない。大統領の所属政党と議会の多数派が異なることはあっても、議会がこんなに執拗に弾劾を目指すことはないのだ。
アメリカの大統領制にあって、韓国にないものは何か。それは副大統領の存在である。
アメリカでは大統領が弾劾されたり、辞任したりすると、副大統領がその任にあたる。1970年代のウォーターゲート事件を思い出してほしい。当時のニクソン大統領は弾劾裁判が始まると辞任した。代わって、副大統領だったフォードが昇格した。フォードは、ニクソンの残りの任期(2年5カ月)を大統領として務め上げた。