5月7日に5期目のロシア大統領に就任したロシアのV.プーチンは、即座に新政府を立ち上げ、それが終わるや否や、就任後初の外遊となる中国訪問を果たした。
これらの間を縫って彼は、EAEU(ユーラシア経済連合)創設10周年首脳会議(最高ユーラシア経済評議会)、対独戦勝記念式典、国内軍管区長たちとの会議を立て続けにこなしている。
多忙な予定を次から次へと消化していく彼の精力的な行動は、71歳になっても衰えを見せていない。
そしてウクライナとの紛争では、5月の始めからロシア軍が戦線を広げ、ウクライナ・ハルキウ(ハリコフ)州へ再度の侵攻を開始した。
一連のこうした動きには、対ウクライナ紛争での状況変化に対応を強いられながらも、政経両面にわたるロシアの国家生存・発展の確保という長期かつ遠大なプーチンの目標が込められているようだ。
以下では、そのプーチンの長期戦略と対ウクライナ紛争について触れてみたい。
ロシア新政府の顔ぶれ
まずは国内の体制固めである。
プーチン第5期出帆でのロシア政府閣僚人事は、大統領就任後の1週間で議会の承認などの必要な法的諸手続きをすべて完了した。
事前の予想通り首相のM.ミシュツチンは留任し、閣僚も大半(21人中15人)が前政府からの残留となった。
治安関係のFSVNG(国家親衛隊)、FSO(連邦警護庁)、FSB(連邦保安庁)およびSVR(対外情報庁)の長も全員留任となっている。
概ね現状維持だったこの閣僚交代で、メディアの関心は事実上の戦時下にありながらあえて国防相を交替させた点に集まった。
国防相・S.ショイグは国家安全保障会議書記長(VPK―軍産委員会副総裁、FSVTS―連邦軍事技術協力庁長官を兼務)に回り、後任にはこれまで大統領補佐官や第1副首相を務めて経済畑を歩んできたA.ベロウソフが任命された。
文官登用となるこの国防相交替についてロシア大統領府報道官やプーチンは、GDP(国内総生産)の6.7%にまで膨れ上がった国防費(治安関連を全部含めれば8%)と経済全体との調整・制御の必要性が増したことを背景に挙げる。
その中で、国防省を産業界のイノベーションに開放して両者をより効果的に結び付け、軍事力の質の向上を達成すると説く。
新政府発足の翌15日にプーチンは、軍の司令官たちを集めた会議でこの旨を繰り返し、方々参謀本部関連では人事に変更はないと伝えている。
多くのメディアはこの交代人事を、戦時経済の確立という観点からロシアがウクライナとの長期戦に備えての策を採ったと捉えた。
プーチンは当分戦いをやめるつもりがない――である。