西側が嘲笑っていた中露蜜月が本物に

 いつ喧嘩別れするかを今か今かと待っていたわけだ。だが、論調はどうもそうはならないらしいに変化しつつある。

 ここまで中露を結束に追い遣ったのは、米・J.バイデン政権の戦略的・戦術的誤算だった、とする論者もいる。

 また、別のある有力な論者は、中露の仲を引き裂くには、米国がウクライナか台湾のいずれかを諦めるしかなかろう、とまで言い出した。これは確かに当たっている。

 もし中露蜜月が崩れる契機があるとするなら、それは米国がロシアか中国に大幅な譲歩を行ってその相手を味方につけるか、プーチンと習のいずれか(または双方)が消え去った場合のみと考えられるからだ。

「中露結託」が本物なら、ロシア・ウクライナ紛争でのロシアに対する中国の援助が、今は抑制されていてもいずれは本格的な軍事面でのそれへと拡大する、という悪夢に西側は悩まされる。

 ロシアは2023年に電子製品の約90%と工作機械の約70%を中国から輸入したとされる。デュアルユースが可能なだけに、すでにロシアが使用する兵器ほかにこれらが使われていてもおかしくはない。

 また、今回プーチンがハルビンを訪問したことは、同地が中国の軍事研究中心の一つだけに、中国が軍事分野で直接適用可能な技術を提供する用意があることを示した、という指摘もある。

 先月下旬に訪中して習や首相・李強、外相・王毅と面談した米国務長官A.ブリンケンは、公にはされていないが、来るべき中露首脳会談も睨んで、ロシアへの援助を続けるなら対中制裁を強化する、と脅しをかけたらしい。

 その効果がどれだけあったのかについて、プーチンと習の中南海での飲茶や別れ際の「一見わざとらしいハグ」の放映が米国への侮蔑を表している、と米紙は書く。

 それらがブリンケンへの習の明確な回答になっているという見立てだ。

 それが当たっていたにせよ、ロシアの専門家は、米国が侮辱されたとかを云々する西側の見方は感情的な反発に過ぎないと切り捨てる。

 さらに、すべての欧米メディアがプーチン訪中を報道し、これを中露の問題ではなく、世界的に重要な出来事に変えてしまったとも皮肉る。

 日本のある論者は、「プーチン氏は中国の対米不信をさらに焚きつけようと、陰謀論めいた米国悪玉説を習氏に吹き込んできた」と指摘している。

 しかし、以前もこのコラムで書いたことを繰り返せば、他人に言われたことを単純に信じ込むほど中国も愚かではない。

 ロシアの論者は問う。

「習近平の反米主義が不合理だと主張するなら、近年の米国の攻撃的な反中言辞と、米中間の相互投資と貿易の両方を制限する絶え間ない立法・規制措置をどう説明すればよいのだろうか」

 米国が中国にどう対処し、それを中国がどう見ているのかは、プーチンにあえて言われなくとも、なのだ。

 習がプーチンの話に耳を貸すならば、それは彼を米国が自国の成長の障害となっているという共通認識を持つ人物と考えているから、と解すべきだろう。

 では、中露関係は盤石なのか?

 この世界に盤石な国家関係などあり得ないのだから、問いの立て方そのものが正しいとも思えない。どんな関係にも不安要因は付き物だから、答えは「No」に決まっている。

 ましてや、10年、20年先まで見渡そうとすれば、中露の関係がどう変わるかなど誰にも分からないのは当たり前の話だ。盤石と同じく国家関係に永遠もあり得ない。

 現状での中露間の不安要因としては、いくつかが多くの論者によって挙げられている。

 まずは英誌ほかが指摘するように、中国が経済の不調を抱える中でどこまで西側を敵に回せるのかである。これは今の習体制をどこまで維持できるのかにも繋がる問題だ。

 上述の中露共同宣言を見る限り、習もプーチン同様に米国との対立関係が長期になると想定し、それに備えるべく動いている。

 従って、米国との対立を不必要に強めることには慎重であっても、現在の経済状況改善のために対米融和策に大きく転じるとは考え難い。

 中国が融和に向かっても、米国が中国潰しの意図を将来にわたって完全に忘れ去る保証はないからだ。

 しかし、彼がそう考えても、彼に従う中国政府関係者が皆揃ってこの見方を共有しているとは断定できない。どのような権威主義国家であれ、国論の完全統一などあり得ないのだ。