日本でも「オッペンハイマー」は公開された(3月29日、写真:AP/アフロ)

トランプ派下院議員が原爆投下せよと暴論

 米国による原爆開発を主導した天才科学者の半生を描いた伝記映画「オッペンハイマー」が日本で公開され、すでに興行収入11億円を突破、世界興行収入は10億ドル(約1540億円)に迫っている。

 ノーベル賞と米アカデミー賞には弱い(?)日本人にとって、アカデミー賞の作品賞など7部門を制覇した映画は「観なければならない」映画になっている。

 この映画は、一時は映画配給会社がボイコットするのではないか、といった憶測もあった。

 映画配給会社「ビターズ・エンド」は2023年12月に公開を発表した際、「本作が扱う題材が、私たち日本人にとって非常に重要かつ特別な意味を持つものであるため、様々な議論と検討の末、日本公開を決定した」とコメントを出していた。

 米国公開から約8か月遅れて公開された「オッペンハイマー」は、日本では賛否両論に揺れている。

 原爆を投下された広島や長崎の惨状が描写されていないとの指摘が各方面から出ている。

 当然である。

 いくら過去にはこだわらぬ国民性とは言え、日本は世界で唯一の被爆国。加害者は今やお互いに最も重要な同盟国になっている米国だ。

 特に映画を見た被爆地の市民や被爆者からは厳しい批判の声が上がっているが、当然だ。

 先に訪米した岸田文雄首相が原爆を投下された広島出身であることが明らかになっても、何とも思わぬ(?)米国民、メディアに無神経さを感じるのは、筆者だけではあるまい。

 それほど米国民は「極楽とんぼ」というべきか、あまり過去を振り返らない。

 だから被爆者の人たちの以下のような感想を聞いても別に特別の感情はないのかもしれない。

「オッペンハイマーが原爆開発をどのくらい悩み、どんな心持ちだったかが十分に描き切っていない」

「原爆開発や投下を決断した人たちと、実際に殺された被爆者たちのギャップを知り、息苦しくなった」

核実験の成功や原爆投下で大衆が喜ぶシーンは、長崎で育った者としては複雑な感情を持った」