米ホワイトハウスで話すトランプ米大統領(写真:ゲッティ=共同)

(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

トランプ2.0に翻弄される世界

 第2次トランプ政権、トランプ2.0の選択に世界が翻弄されている。

 紛争当事国であるウクライナを置き去りにして、ロシアとの侵略戦争の停戦を模索し、一方ではイスラエルによる「停戦破り」を黙認している。

 自由貿易の旗手でもあったはずだが、カナダやメキシコといった国境を接する国々や日本のような同盟国も含めて世界中に関税をかけていこうとしている。

 日本に関連するところでいえば、在日米軍の機能強化停止が検討されているという。

在日米軍強化の中止検討 トランプ政権、連携に影響も―報道:時事ドットコム

 日米安全保障条約と憲法9条は、アメリカの核の傘と抑止力を借り、日本は「最小限度の実力」を保持するという戦後安全保障の基軸であり根幹にあたる。

 北東アジア地域の安全保障上のリスクの増大はかねてから指摘されているとおりである。中国の台頭、北朝鮮、ロシアの隣接などを挙げるだけでも十分であろう。

 在日米軍の機能強化停止は、その分、日本の負担増加や、そもそも有事において米軍を期待できるのかという問いを日本に想起させかねない。

 日米安全保障条約の片務性は歴史のなかで相当程度解消されてきただけに日本社会に与える影響も大きい。

 新安保への改正や、1978年の日米防衛協力指針の漸次的発展などが挙げられる。特に97年指針と、安倍政権下の2015年の新指針では現状を鑑みて、平常時からの対応、周辺事態から存立危機事態という概念の変化、サイバーや宇宙といった新領域への対処、在日米軍と自衛隊の一体的運用など含めて日米協力のあり方は良かれ悪しかれ進化してきたはずだった。

 やはり1970年代にはじまった世界最高水準の在日米軍駐留経費負担等の、いわゆる「思いやり予算」もあれば、横須賀基地は米海軍のインド太平洋地域を担当する第7艦隊の母港でもある。アメリカの環太平洋戦略の要でもあるはずなのだ。

 いったいアメリカはどうしてしまったのだろうか。