トランプ大統領はイエメンの親イラン武装組織フーシ派への空爆を命令、大規模な被害をもたらした。写真は重傷を負い病院に搬送される少女(3月16日、写真:ロイター/アフロ)

1.トランプショックの現状

 米国のドナルド・トランプ氏が大統領に就任した後、世界の常識だった様々な秩序形成の土台が一変した。

 米国の内政は民主主義の破壊が進み、1930年代前半のヒトラーの政治との類似性を多くの有識者が指摘する。

 米国内ではトランプ大統領の圧倒的な影響力を恐れて、議会、裁判所、メディアがトランプ政権を批判できずにオロオロしている。

 経済界はトランプ政権の政策運営を目の前にしながら、あまりにも非常識な中身に頭がついていかず、まだ反応できていないと聞く。

 大半の有識者はインフレや株価下落等の副作用が表面化して政策の修正をもたらすことを期待している。

 欧州は米国から自立し、自主防衛力大幅増強のため英仏独3国を中心に結束が進んでいる。

 英国が欧州に戻り、欧州と米国の亀裂は急速に深まった。英仏独3国はいずれも昨年夏まで不安定な内政に苦しんでいた。

 しかし、ここにきて英国のキア・スターマー首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、これからドイツ首相に就任するキリスト教民主同盟(CDU/CSU)のフリードリッヒ・メルツ党首はトランプ政権に対する対抗姿勢を表明し、国内での求心力を回復しつつある。

 2月14日の「ロシアの即時撤退要請」「ウクライナ領土保全」を求めた国連決議では、G7のうち米国だけが決議に反対し、G7の分裂が表面化した。

「ほんの半年前まで、誰もこんな世界が現れるとは想像していなかった」

 2月下旬から3月前半までの米国欧州出張中に筆者は何度もこの言葉を耳にした。