2.各国経済社会の不安定な状況

 トランプショックに直面する各国の経済社会は依然として不安定である。

 米国はトランプ政権が実施する関税引き上げ、不法移民対策強化、公務員削減等により、インフレ、株価下落、ドル相場下落、消費低下等が引き起こされるリスクが指摘されている。

 これによってトランプ大統領の支持率が低下する場合、来年2026年秋に予定されている中間選挙では与野党の議席数が接近している下院で与党共和党が過半数を失う可能性がある。

 下院で負ければトランプ政権の政策運営の自由度は大幅に制約される。

 トランプ大統領はその事態を回避するため、国家非常事態制限を発動して中間選挙を実施させないという手段を取るのではないかと懸念する米国欧州の有識者もいる。

 欧州は安全保障面では結束しているが、エネルギーや穀物の価格高騰の影響で経済は不安定なままである。

 防衛費の大幅増大に向けて財政規律を保つために定められている財政ルールを変更し、財政赤字を拡大して予算を捻出するしかない。

 現在はトランプショックに直面して主要国は一丸となって結束しているが、これが長期化すれば財政配分の選択肢が縛られ、経済社会の安定のために必要な予算が削られ、国民の不満が高まる可能性が懸念される。

 金融面で金利や為替への影響も心配だ。

 中国も経済の停滞が続いている。昨年9月以降、各種の景気刺激策が実施されているが、不動産市場の停滞と地方財政の悪化は深刻だ。

 不動産販売価格は一部に改善の兆しが見え始めてはいるものの、主要都市の不動産市場が安定を回復するのは早くて2026年、遅ければ2028年頃になると見られている。

 さらには、今後生産労働人口の減少、都市化の減速、大規模インフラ建設の減少といった構造要因のマイナス作用の拡大は避けられない。

 中国企業経営者や一般の消費者がある程度自信を回復して投資や消費が安定するまでにはまだ時間がかかりそうだ。