モスクワを訪問した米国のスティーブ・ウィットコフ特使と握手を交わすプーチン大統領(4月25日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

4月以降の協議で見えてきたこと

 4月29日はD.トランプが米大統領に就任してから100日の節目だったが、それを彼が外交面での成果で飾る場面は訪れなかった。

 この100日の間にトランプは、その関わった6つの国際問題の処理すべてで失敗している、とある論者は酷評する。

 イスラエルとその周辺国、イランの核開発、対中政策、台湾問題、世界を巻き込んだ関税大騒動、そしてロシア・ウクライナ紛争だ。

 トランプ同様にロシア大統領・V.プーチンも、5月9日の対独戦勝80周年記念式典を、ウクライナとの停戦・和平の見通しを語ることなく終えている。

 合意到達の目標とみなされた日々は過ぎ行くが、2月の米露外相会談以来続けられてきた両国間の停戦・和平協議でも、いまだにその着地点が見えてこなかった。

 その状況下で、ここ数日の間にロシアとウクライナの間の停戦やその直接交渉の話が急速に浮上している。

 モスクワでの対独戦勝80周年記念式典の前日(モスクワ時間では9日早朝)に、トランプは以前にも提起していた30日間の停戦を再びロシア・ウクライナ双方に呼び掛けた。

 これに即座に呼応して、対ウクライナ支援有志国(英、仏、独、ポーランド)首脳とウクライナ大統領・V.ゼレンスキーは、10日にトランプの米提案の受け入れを表明する。

 対するプーチンは11日早朝(モスクワ時間)に開かれた記者会見で、15日にイスタンブールにてのロシア・ウクライナの直接交渉を提案することで切り返した。

 このロシアから打ち返された球に対して、トランプは歓迎の旨をSNSに投稿、これに追随してゼレンスキーも30日間の停戦実施を条件としてロシアとの協議受け入れを表明する。

 ロシア外務省は、ゼレンスキーの条件付けがプーチンの述べた趣旨を理解していないと批判し、関係諸国間の思惑の溝を改めて浮き彫りにしたようだ。

 だが、その直後にゼレンスキーはイスタンブールでプーチンと会談を行うという提案を寄越してくる。

 何とも目まぐるしいほどの動きである。

 本稿執筆の段階では、これらが長期の停戦や和平交渉への道へとつながっていくのかをにわかには断定できないが、それを占う意味も込めて、先月から最近に至るまでの米露間の交渉の動きをさらっておくこととしたい。