「中央集権型」の国づくりを大転換する機会になる

 近い将来に訪れる確率が高まっている大震災によって、日本は明治維新、太平洋戦争敗戦につづき3度目の大転換期を迎えることになる可能性が高い。言い方を変えれば新たな国づくりを迫られることになるかもしれない。そのとき、従来通りの東京一極集中的な国づくりをするのか、地方分散型の新たな国づくりをするのか。

 精神科医・名越康文氏との対談本『ニホンという病』(発行・日刊現代)のなかで、解剖学者の養老孟司氏はこう指摘している。

〈どうせ、その頃も今みたいな(日本が衰退局面にある)状況になっているはずですから、これを元に戻すっていう時に、この国は何かあると以前の日常に戻すという傾向があるんだけども、それを上手にやめられるかがポイントです。

 具体的には、地域的に小さな単位で自給していくことができるかどうか。(東京一極集中から脱却して)そういう小さな社会構造に国をつくり直せるかどうかが重要になります。災害があって、いろんな意味で不幸が起こったあとに、いったいどういう社会をつくるのかが一番大事なポイントだということです〉

 大震災によって日本は大きな打撃を受けることになるが、明治維新から続いてきた「富国強兵」の中央集権型国づくりを大転換する機会にもなり得るということだ。

 首都直下地震、南海トラフ巨大地震の被害想定を踏まえ、いざという時に備えて個人レベルでも対処できることを考えておくことが重要なのはもちろんだが、個人を取り巻く社会や国家のあり方を見つめ直し、復旧、復興時に新たな国づくりを志向するという道があることを今から考えておくべきかもしれない。