(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
トルコ・シリアの地震が人ごとではない
トルコ南東部とシリアとの国境近くの活断層が今年2月、マグニチュード(M)7.8の地震を引き起こした。9時間後には近くの活断層でM7.5の地震も続き、合わせて数十万棟の建物が損壊し、両国で6万人以上が犠牲になった。
日本に劣らず地震の多発する国として知られるトルコでは、厳しい耐震基準が設けられていた。しかし多くの建物でその基準を満たしていなかったことが原因とも報じられている。
日本でも阪神・淡路大震災(1995年)で耐震基準を満たしていない古い建物が多く壊れて犠牲を増やしたが、その問題は30年近くたっても解消されていない。トルコ・シリアの震災は人ごとではない。
地震の頻発する日本では、過去に起きた地震の史料も豊富に残されている。一番古いものは、『日本書紀』にある約1600年前の地震の記録だ。
古代から文明が栄えたトルコは、日本よりさらに古く、約2000年前の地震史料まで遡ることができる。20世紀以降でも、1939年(M7.8、死者約3万3000人)、1999年(M7.8、1万7000人)など、大きな被害をもたらす地震が頻発している。
世界で起きている地震の分布を見ると、日本やトルコ・シリア周辺は、地震発生を示す印で真っ赤になっているのがわかる(図1)*1。どちらの地域も地球を覆っている十数枚のプレート(岩盤)のうち複数のプレートが接している真上に陸地があるためだ。
そんな地震国だから、トルコの耐震基準も日本と並び世界最高水準とも言われてきた。それでも今回の地震では被害が大きかった。基準が厳しくても、それを達成している建物ばかりではなかったためとも報道されている。基準の強度は適切だったのか、遵守されていたのかなど詳しい調査はこれからだが、日本で同じような地震が起きた時、どんな被害となるのだろう。
*1 気象庁 地震の起こる場所 ―プレート境界とプレート内―
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/jishin/about_eq.html