8月23日に観測史上最高の36.3℃を記録した札幌市(写真:時事通信フォト)

 この夏は東京で最高気温が30℃以上になる「真夏日」が連続60日間と過去最高となるなど、日本中が猛暑に苦しんだが、北海道も例外ではなかった。連日、異常な高温に見舞われ、道内では7月20日から44日連続して真夏日を観測した。もちろん観測史上最長更新である。

 札幌では8月23日に過去最高となる36.3℃を記録し、最高気温が35℃以上となる「猛暑日」が過去最多の3日間となった。ここ数年、北海道の夏の高温は当たり前になってきているが、このまま「北海道の夏も暑い」イメージは定着してしまうのだろうか。

エアコンとは無縁の世界だった北の暮らしが一変

 まさかの展開だった。筆者は8月19日から1週間、夏休みを取り新千歳空港から1時間ほどのところにある小さな町に滞在した。太平洋に面した白老町は北海道の中では降雪も少なく、夏場は比較的冷涼で過ごしやすい地域である。

 気象庁のデータを見ると、この町の平年の8月の平均気温は20.0℃で、最高気温は23.3℃、最低気温は17.1℃となっている。お盆が明け、例年であれば朝晩は肌寒くなる時季である。それが今年は地獄のような蒸し暑さとの戦いに追われることになったのだ。

 気温は連日28、29℃まで上昇。札幌のような猛暑日こそなかったが、湿度が80~90%と高く、屋内はサウナ状態だ。このあたりの住宅はほとんどがエアコンとは無縁の世界。「9割はエアコンなんかつけてないよ」と地元のご婦人も語っていた。

 滞在先の拠点にもエアコンはもちろん扇風機もない。到着の翌日、あまりの蒸し暑さに耐えられず、ホームセンターを訪れると、扇風機は完売。小さなサーキュレーターが2台あるだけだった。隣の市にある家電量販店を訪れるが、ここでも状況は似たようなもの。もう一軒回ったが、やはり手ごろなサーキュレーターは在庫が乏しい。やむなく大小2つのサーキュレーターを購入して、急場をしのぐことにした。

 結局、滞在中は晴天や曇天が続き、蒸し暑さから解放されることはなかった。早朝や夕方に近所の川の上流に出かけ、釣りをしながら涼をとるのが日課となった。

 猛暑の北海道に悲鳴を上げたのは観光客だけではなかった。2拠点生活のお試し体験をするために町内にある住宅を1カ月間借りて暮らしていた首都圏在住のご夫婦と知り合った。アウトドアが好きで楽しみにしてやってきたという。

 ところが、「北海道のイメージが完全に崩れました。海、山、川、温泉、そしてグルメと環境は抜群なのですが、もう3週間も蒸し暑さが続いてうんざりです。これなら沖縄のほうがいいかも」と思案顔だった。