尾鷲市とLocal Coop 尾鷲のワークショップで修復した砂防堰堤。土砂に埋まっていたが、泥をかき出し、石を積み直した尾鷲市とLocal Coop 尾鷲のワークショップで修復した砂防堰堤。土砂に埋まっていたが、泥をかき出し、石を積み直した

 企業版ふるさと納税を原資に始まった「みんなの森」プロジェクト。だが、尾鷲市やLocal Coop 尾鷲はカーボンクレジットを企業に販売するために、同時並行でJ-クレジットの申請を進めていた。クレジットの取得を進める企業の思惑とは。(篠原匡:編集者・ジャーナリスト)

◎第1話:荒れた人工林を復活させる!三重県尾鷲市「みんなの森」で進行中の生物多様性回復プロジェクトとは?
◎第2話:キーワードは「生物多様性」、ヒノキを売れば売るほど大赤字の山に資金を呼び込む「みんなの森」の仕組み
◎第3話:気候変動リスクに見いだした希望、2600万円のふるさと納税から始まった消滅可能性自治体の“逆襲”

 尾鷲市のJ-クレジットは2025年3月から認証される見込みだ。第一弾の2025年3月は1100トン。その後、認証される森林面積の増加に伴って、2027年度以降は6500トンのクレジットが認証される見込みだ。

 こうして生み出されたクレジットは、Local Coopを推進するため、Next Commons Lab(NCL)と三ッ輪ホールディングス(HD)、TART(現NEOART)が設立した「paramita(パラミタ)」がクレジットの販売先を開拓している。

※TARTはSocial Token発行やコンテンツ産業におけるNFT活用をサポートしている企業で、林が手がけた旧山古志村のNishikigoi NFTにも関わっている。

 まだクレジットは認証されていないため、契約レベルだが、ヤフーは年間500トン分のクレジットを10年間、購入すると発表済みだ。また、サカイ引越センターや求人情報サービスを手がけるディップもクレジットの購入を検討している。

 クレジットの購入を考える企業の狙いはさまざまだ。

 ヤフーの場合、データセンターなどで大量の電力を消費しており、その分のCO2排出を相殺することが大きな目的である。今後、AIの活用が増えれば、その膨大な計算量を支えるため、データセンターにおける消費電力量も急増していく。そうした消費電力量のオフセットニーズに直面していた。

 同様に、ディップも経営の重要指標の中に気候変動対策を入れており、CO2のオフセットに対するニーズは強い。加えて、ディップの本業は人材サービス事業である。地域に一次産業の担い手を送り込むことで、地域の森を健康に維持していく。その循環ができれば、本業を通して気候変動対策を進めることができる。

 こうした相殺ニーズに加えて、新しい商品・サービスの開発に活かそうとする企業もある。