カーボンクレジットを個人に販売する仕組み
これは「みんなの森」が生み出すカーボンクレジットをNFTとして販売し、その収益の一部を尾鷲の森づくりや教育に充てるというもの。具体的には、個人がSINRAのNFTを購入すると、その資金が森林整備に回り、CO2吸収量の増加によってクレジットが創出されると、そのクレジットが保有するNFTに付与される。
J-クレジットは申請の準備から実際にモニタリングが終了して認証を受けるまで、通常は2年以上かかる、つまり、実際に森が環境価値を持つようになるまで、森林整備のコストを自治体などが負担しなければならない。
だが、SINRAのスキームを活用すれば、気候変動問題に対して何らかのアクションを起こしたい個人の資金をクレジットの創出前に集めることが可能だ。「みんなの森」では今年からクレジットの創出が始まるが、SINRAでは来年以降、認証されるクレジットを販売していく。

「SINRAは森に対して何か貢献したいと考える個人向けのサービス。その貢献が実った証としてクレジットをNFTに付与していきたい」。SINRAを手がけるパラミタの大澤哲也(三ッ輪HD・取締役経営戦略本部長)はそう語る。
このSINRAのスキームを活用したものに、小田急電鉄の「エシカル旅プラン」がある。
これは、小田急トラベルが販売する「箱根ベストパック」の一つで、通常の旅行代金に加えて、1000円のエシカル旅行代金を追加することで、箱根でのバスや海賊船の利用、宿泊や食事に伴って発生するCO2をオフセットできるという旅行プランである。
このプランを購入した消費者には、箱根の伝統工芸である「寄木細工」をモチーフにしたGenerative ArtのNFTと、オフセットの証明書が提供される。
「生活者と森をつなぐ仕組みがSINRA、企業と森をつなぐ仕組みがJ-クレジットという位置づけです」。LC尾鷲でプロジェクトマネジャーを務める河合恵里はそう説明する。

こういったNFTの活用は、林とTARTの高瀬が手がけた旧山古志村のNishikigoi NFTの経験が生きている。