スシローが尾鷲の森に寄付した理由

 例えば、「回転寿司」スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIESは、企業版ふるさと納税での寄付を決めた。

 スシローでは、尾鷲の養殖ハマチを約150店舗で扱っている。その日の朝に捕れたハマチがその日のうちに店舗に並ぶというオペレーションが可能なのは、尾鷲の海が健全に維持されているため。そして、その海を育んでいるのは、「みんなの森」をはじめとした尾鷲の森である。そこで、森と藻場の再生のために寄付したのだ。

尾鷲の海で捕れる魚(写真:共同通信社)尾鷲の海で捕れる魚(写真:共同通信社)
海の幸に恵まれている九鬼の海だが、最近はガンガゼなどの被害が増えている(写真:共同通信社)海の幸に恵まれている九鬼の海だが、最近はガンガゼなどの被害が増えている(写真:共同通信社)

 大企業は今、投資家からカーボンニュートラルに向けた取り組みを強く求められている。米アップルはすべてのサプライヤーに対して、使用する電力をすべて再生可能エネルギー由来に切り替えるよう義務づけたが、同様の動きが加速するのは確実だ。しかも、単に排出権を買うだけではなく、具体的な行動も求めつつある。

 その点、「みんなの森」には生物多様性の回復を実践するための場があり、ワークショップがある。社員が森づくりに実際にかかわり、その森が吸収したCO2のクレジットを購入するというストーリーは、企業からすれば投資家にアピールしやすい。

「尾鷲ネイチャーポジティブアクション会議」に先立って実施された11月30日のワークショップには、サカイ引越センターやディップ、FOOD & LIFE COMPANIESなどの社員も参加していた。

「みんなの森」でシガラ作りに取り組む人々。11月30日のワークショップには、サカイ引越センターやディップ、FOOD & LIFE COMPANIESなどの社員も参加していた。「みんなの森」でシガラ作りに取り組む人々。11月30日のワークショップには、サカイ引越センターやディップ、FOOD & LIFE COMPANIESなどの社員も参加していた

 カーボンクレジットの売却で森林整備を進める地域は他にもあるだろうが、実際に参画できる場があるかどうかは企業にとって大きなポイントだ。

 こうした企業向けの取り組みに加えて、LC尾鷲は個人に対してカーボンクレジットを販売する仕組みも作っている。パラミタが開発した「SINRA(シンラ)」というサービスである。